おおい、おおい。

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 *** 「そもそもこの病院が移転することになったのは!中学生の女の子二人が、相次いで窓から飛び降りて自殺しちゃったからなんってさー!」 「こええええええええええ!」  肝試しは、すっかりお祭りムードになっている。  一人、二人、三人と無事に戻ってくれば、誰も彼も危機感がなくなっていくというものだ。  案の定、ほとんどのメンバーが戻ってくる頃になると、クラスの男子数名がしょうもない噂話をして盛り上がっている始末である。  いやはや、どこで聞いたのやら、そんな話。いくらなんでも、ただの移転した病院を事故物件にしてしまうのは不謹慎だと思うのだが。 「あ、戻ってきた」  おーい、とアッキーが手を振る。一組、二組と交互に出発したので、一番最後に戻ってくることになったのは二組のミサワだった。小さな相撲取り、といった大柄な体型でがっしり体系の彼は、むすっとした顔でみんなに懐中電灯を向ける。 「おい、誰だよ、俺の短冊持っていったやつ!箱の中に俺の分残ってなかったんだけど!まさかお前じゃねえよな、武田!」 「はあ?」  不機嫌な理由はそれだったらしい。負けずと、同じくご機嫌斜めな様子だった武田が返す。 「それはこっちの台詞だ。俺も短冊残ってなかったんだ。誰だよ、俺の分持ってっちゃったの!それこそ二組の仕業じゃねえだろうな」 「はああああああああああああ!?」  何か、様子がおかしい。  どうやら最後に出発した武田とミサワ、彼らの分の短冊がなくなってしまっていたというのだ。ちゃんと人数分用意したはずである。まさか、ダブリで持って行ってしまった人がいるのか?あるいは。 「やだ、怖い」  僕の手を、ゆきえちゃんが掴んだ。泣きそうな顔でこちらを見上げてくるので、思わずどきりとしてしまう。  僕も一応男だ。可愛い可愛いカノジョにこんな顔されたら、庇護欲も湧こうというものである。 「し、心配しなくていいよ、ゆきえちゃん。きっと誰か間違えて持ってっちゃっただけだって」 「そうかなあ……」 「うんうん、そうだよ」  武田とミサワがあまりに喧嘩するので、呆れてミサワの彼女であるれなちゃんが止めに入っていた。お世辞にもイケメンとはいえないミサワに、何であんな可愛い恋人がいるのやら。いや、僕のゆきえちゃんの方が百倍かわいいけども!
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