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一組の三番。ついに、僕の番だ。
肝試しは好きだけれど、それはそれとして怖い。万が一の時のためにスマホは持っているし、懐中電灯の明かりは思ったよりも明るかったがそれでも汗で手が滑る。
思ったよりも内部は綺麗だったが、それでもあちこち硝子が割れているので足元には十分気を付けなければならなかった。時々、得体のしれない黒い液体?泥?のようなもので床が汚れている箇所もある。まさか血、なんてオチはないだろうが、それでも気持ち悪いものは気持ち悪い。
手摺もあちこち外れかけているので、できれば掴まない方がいいよと言われていた。一番手で中に入って戻ってきたアッキーが手摺を触ったら、バキ!と大きな音がしたというのである。こんな硝子やら石やらだらけの階段で、下手に転んだら大怪我をしそうだ。なるべく手摺も触らないよう、壁をつたいながらゆっくり下へ降りていくことにする。
霊安室。
そう書かれた部屋は、そこまで遠くはなかった。階段を降りて、少し左に向かってあるけばすぐである。
その前に、二つの箱が置かれていた。黄色い箱が一組の短冊を入れた箱。緑の箱が二組の短冊を入れた箱である。
僕は迷わず一組の箱に手を伸ばすと、自分の番号、つまり三番と書かれた短冊を取り出した。
「おおう、本格的……」
思わず呟く。ホラー感を出すためだろう、短冊には血のような赤い文字で「3」と上の方に書かれていた。下に大きくスペースがあいているのは、後で何かを書き込ませるつもりなんだろうか。
短冊を取り出して、さあ戻ろうとした時だった。
「え」
気づいてしまった。
目の前の霊安室のスライドドアが――僅かに開いていることに。
――あ、あれ?ここ、鍵がかかっていて、開かなかったって言ってなかったっけ。
隙間は精々、僕の掌を広げた程度。ひょっとして、彼らは揃って嘘をついたのではないか、と思った。自分達をびびらせるために、“霊安室には鍵がしまっていた”ということにしたのではないか、と。
つまり、開いている扉を見た人間をびびらせるために。幽霊の仕業に見せかけるために。
「なんだよ、もう……!」
絶対何か仕掛けてるだろ。そうは思っても、好奇心は抑えきれない。
僕は懐中電灯を霊安室の方へ向けた。そっとスライドドアに手をかけるものの、ひっかかっているのか現在以上に開くことはないらしい。中へと光を向けてみる。が、暗すぎるのか、真っ暗闇が広がるばかりで何一つ見えそうもない。しばらくのぞき込んだりドアを開けようと格闘してみたが同じだった。
「おーい……これだけ?つまんな……」
何か仕掛けるなら、もうちょっと面白いことをしてほしい。ドアがちょこっと開いていたところで、中にオバケの一つも見えないのではまったく意味がないではないか。
僕は呆れてて、そのまま来た道を引き返したのだった。
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