金木犀の妖精

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踵を返して歩き出すと 「あっ『愛情に年齢の壁はないわ。お互いに愛し合っていれば、その人が何歳だろうと私には関係ないの。』!!」 「は?」 思わず振り返ると彼女の顔は茹で蛸のように真っ赤っかになっていた。 「何急に?」 「って、マリリン・モンローが言ってました!!」 「マリリン・モンローって……」 「7年!7年だけ待ってて下さい!私20歳になったらもう1回三上さんに告白しますから!」 「はぁ!?」 何言ってんの…こいつ…!? ワケ分からなくなって振り返るとあの子は必死な顔して両目に涙を浮かべて俺を真っ直ぐ見ていた。 「私絶対三上さんの事振り向かせますから、7年だけ待ってて下さい!7年経ったらもう1回三上さんに好きだって言いますから!」 …こいつ、馬鹿なのか?つうか何でろくに話した事もない俺なんかをそんなに好きなんだよ?「……意味分かんねぇ」                   === ======= 令和6年4月。迷惑で勝手な彼女から告白を受けた。だけどその後数年経って、ようやく何であの子があんなに俺の事が好きなのかを知った。もう随分昔の事でそれはとてもさり気ない事だったからすっかり忘れていた。 その事に気付いたのは大学を卒業してから入社した会社で異動の話しが出され引越しの準備をしていた時にタンスの奥から出て来たたった1個の虹色のビー玉を見つけた時だった。 あれは俺が13歳の時、婆ちゃんのお見舞いに1人で病院に行った時の話し、病院の廊下でけしょけしょ咳をしながら胸に分厚い本を抱え持ってふらふら歩いていた小さな女の子が居た。
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