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「ああ〜足りないっっ! 貧乏人に受験料、大銀貨一枚は多すぎるよー!」
イリスは最近の野営地と決めた岩穴の中で、ひっくり返って声をあげた。
いきなり大の字に寝転がり、手足をバタバタさせ始めたイリスに驚いて、仲間である3羽の幻鳥キアが近づいてくる。
「イイネ……?」
「良くない! ちっとも良くないよ〜ハル〜」
ピョコピョコと始めに近寄ってきたのは、幻獣種キアのハル。
ハルは翼を痛めた事故の後、イリスと契約を交わした。
なので、それなりに意思疎通できるはずなのだが、言葉はまだまだ拙い。
ハルの後ろからは、2羽の幼鳥がピョコンと顔を出す。
ハルの子ども達だ。
イリスは黄色の風切り羽がある方をキーちゃん、緑と黒の羽が混じっている方をクーちゃんと呼んでいる。
いずれも契約なしの愛称のようなものだ。
そして、契約にはその幻獣の真名が必要だが、成鳥するまでその名は秘められているので、そもそもイリスが知る由もない。
「キーちゃんとクーちゃん、……ごめんね。驚かせちゃったかな?」
ガバッと起き上がり2羽の様子をうかがうと、2羽ともプルプルと首をふりながらもイリスに近づき、不思議そうに手元をのぞき込んでくる。
そこには、同じ種類で10枚ずつに重ねられた鉄貨や銅貨がきれいに並んでいた。
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