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「てか佐伯くんも行きなよ、向こう」
「俺は良いよ、海好きじゃないし」
そんな会話をして、ずっと海を眺めていた。
水着、私も佐伯くんにアピールできたらと思って着てきたけど無駄だった。
みすぼらしい体と言われてしまえばどうもできない。
見られていることもすっかり忘れてたし。
「てか水着わざわざ新調して着てくるなんて、見せたいやつでもいた?」
そんな風に飛んでくる質問に首を横に振る。
「…もういい、諦めたから」
「はあ?誰に見せたかったの?」
人の気も知らないで聞いてきやがって。
本当の事言ったら意識してくれるのかな。
多分私はまだ佐伯くんが好き。
だからアピールしたいなんて思ってるし、浮かれたりもした。
なのに本人からはみすぼらしい体なんて言われる。
海なんて嫌い。
「みすぼらしいとか貶してきたこの人」
顔は見ないで指を指すと、からかうような言葉を想像していたけど中々言葉は来ない。
「何黙ってんの」
「へぇ?俺に見てほしかったんだ?」
好きだって気持ちを見透かすようなその笑顔。
ドキドキも全部見透かされているんじゃないかって思う。
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