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デート 2話(完)
湖が夕日色に染まっていくのを眺めていると、ライナルトさまが立ち上がり、手を差し出す。
その手を取って立ち上がる。ライナルトさまは湖に近付いていった。
「……きみは以前、『私なんかで』と言っていたな」
「ライナルトさまも、『こんな俺でも』と仰っていましたよ」
今思い出しても顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
そんな私に、ライナルトさまは優しいまなざしを向ける。
「あのときは殿下たちが様子を窺っているのが見えたから、そこで話を切り上げてしまったが……」
「ライナルトさま……?」
「俺は、きみが良い」
――短い言葉だった。とても短い言葉だったけれど――その言葉を、きっと、一生忘れることはないと思った。
夕日に照らされたライナルトさまの顔も、照れたように目を伏せていることも――……
「レオノーレ・テレーゼ・クラウノヴィッツ」
「は、はい……」
「どうか、俺と生涯をともにしてほしい」
ライナルトさまはゆっくりと、言葉を紡いで私を見つめた。
私は……自分の視界がぼやけてきて、泣いているのだとわかった。慌てたように私の涙をハンカチで拭うライナルトさまに、自分の手を重ねる。
「――はい、よろしくお願いいたします……!」
ライナルトさまは、どこか安堵した様子で微笑んだ。
彼が、私を求めてくれた。そのことが、とても嬉しかったの。
そっと抱きしめられて、ぎゅっと彼の背中に腕を回して抱きついた。
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