ご挨拶

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 ライナルトさまを見つけると、ふいと視線をそらされた。そのことが事実だと物語っている。 「クラウノヴィッツの薬が、ふたりの縁を結んだのね」  ノイマイヤー侯爵夫人は微笑みを浮かべると、お茶を飲んで立ち上がった。 「わざわざ来てもらって悪いのだけど、まだ仕事が残っていて……あとは若いおふたりで、ね?」  悪戯が成功したように口角を上げるノイマイヤー侯爵夫人に、私とライナルトさまは顔を見合わせて――もしかして、それが狙いだったのでは? と考えてしまう。  侯爵夫人は忙しい方なのに、わざわざ時間を作ってくださったことには、とても感謝しているわ。 「……少し、歩くか?」 「そ、そうですね」  残された私とライナルトさまは、ノイマイヤー邸を案内してもらった。先程までの部屋は応接間だったみたい。  彼の隣を歩いていると、まだ夢なんじゃないかって考えてしまう。実感がわかない。本当に。 「大きなお屋敷ですね」 「タウンハウスだからそうでもない。領地の屋敷のほうが大きい」 「……え」  さ、さすが侯爵家…… 「シーズン中だからタウンハウスにいたが……そう考えると、きみのプロポーズはちょうどいいタイミングだった」 「忘れてくださいっ」  今でも謎なのよ、『お友達になってください』が『夫になってください』になったことが!  思い出すだけで顔から火が出そうなほど、恥ずかしい。
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