22人が本棚に入れています
本棚に追加
「紹介します。我が婚約者のレオノーレです」
ライナルトさまの簡単すぎる紹介に、ノイマイヤー侯爵は一瞬呆れたような視線で彼を見る。公爵夫人がこちらを見ていたので、私は一歩踏み出してカーテシーをしてから、自己紹介をした。
「ごきげんよう。レオノーレ・テレーゼ・クラウノヴィッツと申します。お目にかかれて光栄でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします」
私が自己紹介を終えると、さらにざわめきが強くなった。クラウノヴィッツは男爵家だからね、仕方ないよね。
そんなことを考えていると、ナターリエさまが近付いてきた。
そっと私の手を握ると、「綺麗なカーテシーだったわ」と褒めてくれる。
「ありがとうございます、ナターリエさま」
「うふふ、わたくしたちの仲じゃない」
ざわめきはさらに強くなった。
次期王太子妃のナターリエさまと親しくしているからだろう。
わかりやすい。おそらく、周りの人たちは私とどういう関係を築こうか悩んでいると思う。
利害関係も、貴族としては大事だからね。
ふと、音楽が聞こえ始めた。ダンスタイムになるみたい。
ちらりとライナルトさまに視線を向けると、バチっと視線が交わった。
それを見ていたナターリエさまは、私の手を離して背中をぽんと軽く押し、「踊ってらっしゃい」と微笑む。
すっと、ライナルトさまが私に手を差し出す。
彼の手を取り、歩き出す。ホールの中央で踊り出す私たちを、いろいろな人が見ていた。
それでも、その視線は気にならなかった。だって、ライナルトさまと踊れているのだもの!
一ヶ月のあいだ、侯爵夫人からいろいろ教わったけれど……中でも一番大変だったのはこのダンスだった。
最初のコメントを投稿しよう!