22人が本棚に入れています
本棚に追加
帰りの馬車で、ライナルトさまはぽつぽつと言葉をこぼす。
殿下とナターリエさまに、今度私と湖に行くから休みがほしいと伝えたら、ナターリエさまに湖のジンクスを教わったこと、ずっと気になっていた『私なんかで』という言葉を払拭されたかったこと、自身もきちんと私を求めていると、理解させたかったこと。
「……そうだったのですか……」
「……きみはいつも、俺と一緒にいられることが嬉しいのだと伝えてくれていたから。さすがの俺でも、きみの気持ちが本当にオレに向いているのだと理解できた」
……自分でもわかりやすい態度だと思います……。だって、好きなのだもの。
「ライナルトさまのお言葉、とても嬉しかったです」
「……これから、いろいろなことが俺たちに降りかかると思う。だが――……」
「ふたりで、一緒に解決していきましょう?」
ひとりだけに負担をかけるのではなく、ふたりで支え合って生きていく。
それが――夫婦というものだと思うから。
「――きみとなら、どんなことでも乗り越えられそうだ」
「私もそう思いますわ」
ふたりで微笑み合ってから、馬車に乗る。クラウノヴィッツ邸へ送ってもらい(パーティーは終わったから)、「今日はありがとうございました」とお礼を伝えた。
ライナルトさまはゆっくりと首を横に振り、「また今度、ふたりで遊びに行こう」と言ってくれたので、私は嬉しくなって、「はいっ」と元気よく返事をする。
そっと、ライナルトさまが私の頬に触れた。
視線を上げると、ライナルトさまの顔がドアップに!
唇に、柔らかいものが触れる感じがして……こ、これはもしや……!?
恋愛小説によくある、く、く、口付けというものでは……!?
「また今度」
「は、はい……」
小さく微笑みを浮かべてから、去っていくライナルトさま。その姿を、ずっと見送っていた。
家に入ることもせずに、ずっと。
だって、絶対顔が赤くなっているもの!
最初のコメントを投稿しよう!