バルコニー

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 すっと私の前に跪いて、手を取った。そのまま手の甲に唇を落とす。 「こんな俺でも良いというのなら、喜んできみの夫になろう」 「――っ、え、あ、あの……!? ほ、本当に私なんかで良いんですかっ、私、身分相当低いですよ!?」  慌ててそう言うと、ライナルトさまはくすりと笑った。  ……ああ、こんなに柔らかい表情を見られるなんて……! って、そうじゃないっ! 「――で、いったいいつまで覗いているつもりですか、殿下たち」 「えっ!?」  バルコニーの扉が開いて、殿下とナターリエさまがにやにやと目元を細めて入ってきた。  え、えええっ、もしかしてずっと見られていたの!? 「ごめんなさいね、つい気になっちゃって」  ナターリエさまが扇子を広げ、口元を隠しながら私に近付いてきた。 「……いや、まさか本当にライナルトを見ていたとは……。ナターリエ、これはライナルトに春が来たということか?」 「ええ、殿下。ライナルトが女性の手にキスを落とすところなんて、初めて見ましたわ」  は、初めて!? だ、だってライナルトさまは殿下の護衛だから、女性と知り合うことだって多かったろうに……! 「硬派なんですね……!」  私の言葉を聞いて、三人は顔を見合わせて――……、ナターリエさまと殿下は思わずというように肩を震わせ、ライナルトさまはバツが悪そうに視線をそらした。
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