猫の旅館

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 猫は夜行性なので、うるさくて眠れないかと思ったら、案外静かで、眠れた。 夜眠っていると、 「ダンナァ…、ダンナァ」  と枕元でそう声が聞こえた。低く、蠱惑的な声だった。  目を覚ますと、私と同じ背丈の、八割れの猫がこちらを覗き込んでいた。 「わっ!」  私は驚き飛び起きた。  「そないな大声出すとォ、他の客も目ェ覚ましますえ」  猫は目を細めて言った。 「ば、化け猫っ!」 「そんなん言わんといておくれやっしゃ。わしも、立派な猫どす」  見事な京言葉で話す猫は、正座をして私の枕元に座っていった。 「そんなんはどうでもいいさかい、ダンナ、一杯いかがどす?」  猫は縁側を指差した。そこには座布団が二つ、その間の机には日本酒と杯が置いてあった。  私は夢だと思った。 「まあ、いいよ」  私は猫の誘いに乗ることにした。私たちは縁側へ移動した。
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