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目が覚めた。朝になっていた。
縁側を見ると、座布団はしまってあって、日本酒はなかった。
不思議な夢を見たな、と思って伸びをした。
旅館を後にするとき、また三毛猫が足にすり寄ってきた。
通りがかった旅館の大将が
「本当にマタタビ持ってません?」
と聞いてきた。
「持っていませんよ」
そう言うと、また大将は不思議そうな顔をした。
「この子はよその人にあまり寄り付かへんのどすけどなぁ。最近、この子の夫が亡くなったんで、寂しいのかもしれしまへんなあ」
「その夫の猫って、八割れの猫だったりします?」
大将は目を丸くして
「どうして分かったんですか」
と言った。
ああ、そうか、と私は思った。
私はしゃがんで、三毛猫を撫でた。ごろごろ言っている。
「君の夫は、天国…いや、今頃猫の国で温泉にでも入っているよ」
「にゃーん」
三毛猫は私の脇をすり抜けて行った。
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