2人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはようございます。今日から入社しました。浅井二那です。よろしくお願い致します。」
なんとか仕事を探すことができ、面接も合格し、再就職することが出来た。
今日はその初めての出社日。
前居たところが人間関係良好かつホワイト企業だったから、この会社でやっていけるかは不安だが、皆いい人そうだ。頑張っていこう。
「浅井くん。挨拶ありがとう。じゃあ……教育係の横田さん。浅井くんをよろしくね。」
「はい。」
横田さん、という方が俺の教育係らしい。
まずは、迷惑をかけないように仕事を覚えなくては。
「横田さん、よろしくお願いします!」
俺は横田さんに元気よく挨拶する。さすがに元気すぎたかもしれない。
「浅井くん、元気だね。これからよろしくね。」
横田さんはそう言って俺にほほ笑みかける。
第一印象はいいのではないか?よし。人間関係も頑張ろう。
「浅井くん。1日目、お疲れ様。どうだった?」
「あっ、はい!大変ですけど……やりがいのある仕事ですね!」
「そうかそうか。浅井くん、とってもやる気があって、いい子で、良かったよ。」
「ありがとうございます!」
1日目、終了。横田さんは少し厳しいけどいい人だし、部長も俺の事を褒めてくださる。
ルンルンな気分で家に帰った。ミナにも上手くいったって報告するぞ。ミナ、喜ぶかな。
これからは俺がちゃんと稼いで、ミナにいい飯を食わせてやるんだ。そのために、明日からも頑張るぞ。
「ただいま!ミナ!」
返事はない。
「……ミナ?」
再び問いかけるも、返事はやはりない。
「……ミナ!ミナ!?!」
ミナが、居ない……?
出かけているのだろうか。でも、ミナは俺と出かける時以外に外に出たのは駅での時のことだけだ。
そんなミナが、一人で外に出るなんておかしい。
でも、もしかしたらという可能性にかけて、少し待ってみよう。外に出て探すのはもう少しあとにしよう。
しかし、待てど暮らせどミナは帰ってこなかった。
なぜだ?なんでミナは帰ってこない?俺に愛想を尽かしたのか?
もしかして、俺がパストを見えなくなってしまったのか?
それならば、原因はこの薬だろう。医者から処方された、この薬。この薬のせいだ。この薬のせいで、ミナは――
もう、飲むのはやめよう。ミナに伝えられてないことが沢山ある。ミナのおかげで、会社に行けるようになったよとか、ミナにいいご飯食べさせてあげられるよとか、今度は俺が作ったご飯を食べて欲しいとか。そして何より――ずっと俺を支えてくれて、ありがとうって。
最初のコメントを投稿しよう!