惹かれあって幻

11/13
前へ
/13ページ
次へ
「おはようございます。今日から入社しました。浅井二那です。よろしくお願い致します。」 なんとか仕事を探すことができ、面接も合格し、再就職することが出来た。 今日はその初めての出社日。 前居たところが人間関係良好かつホワイト企業だったから、この会社でやっていけるかは不安だが、皆いい人そうだ。頑張っていこう。 「浅井くん。挨拶ありがとう。じゃあ……教育係の横田さん。浅井くんをよろしくね。」 「はい。」 横田さん、という方が俺の教育係らしい。 まずは、迷惑をかけないように仕事を覚えなくては。 「横田さん、よろしくお願いします!」 俺は横田さんに元気よく挨拶する。さすがに元気すぎたかもしれない。 「浅井くん、元気だね。これからよろしくね。」 横田さんはそう言って俺にほほ笑みかける。 第一印象はいいのではないか?よし。人間関係も頑張ろう。 「浅井くん。1日目、お疲れ様。どうだった?」 「あっ、はい!大変ですけど……やりがいのある仕事ですね!」 「そうかそうか。浅井くん、とってもやる気があって、いい子で、良かったよ。」 「ありがとうございます!」 1日目、終了。横田さんは少し厳しいけどいい人だし、部長も俺の事を褒めてくださる。 ルンルンな気分で家に帰った。ミナにも上手くいったって報告するぞ。ミナ、喜ぶかな。 これからは俺がちゃんと稼いで、ミナにいい飯を食わせてやるんだ。そのために、明日からも頑張るぞ。 「ただいま!ミナ!」 返事はない。 「……ミナ?」 再び問いかけるも、返事はやはりない。 「……ミナ!ミナ!?!」 ミナが、居ない……? 出かけているのだろうか。でも、ミナは俺と出かける時以外に外に出たのは駅での時のことだけだ。 そんなミナが、一人で外に出るなんておかしい。 でも、もしかしたらという可能性にかけて、少し待ってみよう。外に出て探すのはもう少しあとにしよう。 しかし、待てど暮らせどミナは帰ってこなかった。 なぜだ?なんでミナは帰ってこない?俺に愛想を尽かしたのか? もしかして、俺がパストを見えなくなってしまったのか? それならば、原因はこの薬だろう。医者から処方された、この薬。この薬のせいだ。この薬のせいで、ミナは―― もう、飲むのはやめよう。ミナに伝えられてないことが沢山ある。ミナのおかげで、会社に行けるようになったよとか、ミナにいいご飯食べさせてあげられるよとか、今度は俺が作ったご飯を食べて欲しいとか。そして何より――ずっと俺を支えてくれて、ありがとうって。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加