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 水曜日を待ちわびる僕たちは、色んな質問を重ねていった。 *─────────────────── 星野くんは、読書が好きなのですか? ──────────────────── *─────────────────── そうですね。 偶然にも星乃文庫っていうのにハマりました! ──────────────────── *─────────────────── 星乃文庫、私も好きよ。 青春もファンタジー、色んな種類があって飽きないよね。 でも、いちばんはムーンドロップかなあ。 ────────────────────  高野さんが挙げてくれた「ムーンドロップ文庫」は主に20代の女性に向けたレーベルだという。現代の女子高生が平安時代にタイムスリップして恋に落ちる作品は、実写ドラマにもなった。  それからしばらく経って書いてくれた質問は本好きの理由だった。  別に隠したいわけじゃないから正直に書くしかなかった。 *─────────────────── バスケ部だったんですけど、数年前に足を怪我しちゃって。 そこからスポーツを止めてしまいました。 学校の近くに本屋があって、たまたま入ったらそこからっていう感じです。 ──────────────────── *─────────────────── そっか、書きにくいことでごめんね。 ────────────────────  彼女なりに気をつかってくれたんだろう。  その日はそれだけしか書かれていなかった。  ・・・  いつの間にか季節はひとつ進んで秋を迎えていた。  僕はとひとつ思い出したことをページに書き添えてみた。 *─────────────────── ......あ。そうそう。 今度、本屋に行ってみませんか? この本もそこで買ったんですよー ────────────────────  今日も高野さんに本を手渡す。  長袖のセーラー服に身を包んだ彼女は、ページを見るなりぽつんとつぶやいた。 「私、行ったことあるよ」 「本当ですか! じゃあ今度一緒に......」  けれども、そこから発せられた言葉はとても意外なものだった。 「......でも、私行けないかな」  つい言葉を失ってしまった。話の継ぎ目を見つけれないままの自分に、彼女が告げる。 「もし私に秘密があったらどうしますか?」  彼女はこれだけ言って帰っていく。  まるで、自分との時間をまっさらに戻したい。そんな雰囲気を感じてしまう。  それからしばらく、高野さんは現れなかった。
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