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5.
次に出会ったのは、もう12月だった。
高野さんはねずみ色のコートを羽織って、ブランド品みたいなマフラーをつけている。
「やあ!」
いつもの仕草で、いつもの挨拶をしてくれた。
今日も、いつものように別れていく。
新しいページにはたくさんの内容が書き込まれていた。それはもはや、しっかりとした手紙のようだった。
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星野くんは、覚えていますでしょうか。
足の怪我をしたということなら、もしかしたらと思って。
私、きみに会っているかもしれません。
......
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......急に胸騒ぎがし出した。読む手を止めたいけれど、緊張のままページをめくる。
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私には小さな妹がいました。
幼少の頃から大きな病気を抱えていて、ほとんどを病院のベッドで生活していたのです。
ある日、妹が私に教えてくれました。
「お兄ちゃんとお庭で会ったんだよ。お池を指さしてたら、"あれは鯉だよ"って教えてくれたの」
「お兄ちゃん?」
彼女が振り返って指さした姿が、きみなのかもって。
......
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思い出した。それはたった一日の小さな出来事。
・・・
「......元気な子だね。でもはしゃいだら危ないからね」
ある初夏の日、病院の庭先で小さな女の子にぶつかった。たしかこうやって答えたんだ。
明るくていい子だから、ふと話し相手にいいなと思って少し散歩に付き合ってあげた。すると、池に夢中になった彼女があれはなあに、と指さしたんだ。
「あれはお魚だよ、鯉っていうんだよ」
「そうなんだね、わたしと同じ名前だ!」
そこで、彼女を呼ぶ声がしたから別れていった。
・・・
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妹の名前は、"こい"っていいます。
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思わず声を失った。手から落ちていく本は床にぶつかってページが閉じられていく。そして裏表紙が目に映った。
再び目にした"こい"という文字に疑問が浮かび上がる。
私のじゃない大切なものは、妹のもの。
この本は形見じゃないか。手に取って置きたいんじゃないか。
そんな大切なものになにを書かせていたんだろう。
彼女の真意を聞きたくなった。
......次の水曜日はクリスマスだ。
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