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小鷹はぐれは変人である。
「転校生の小鷹 はぐれ君です。皆、仲良くしてくださいね。じゃあ小鷹くん、自己紹介を」
「わかりました。それではこちらをご覧ください。
──雪が降りしきる寒空の下、頼子は船に乗っていた。と、一人景色を眺める彼女の背に声が掛かる『寒くないですか』。そう、この声を掛けてきた青年こそ、後に夫となる俊之……」
「待って待って」
思わず止めた担任と、何故止められたのか分からないはぐれは互いに怪訝な目でみつめ合う。
「何してるの? やたらクオリティ高いアニメーションが出てきたけど」
「え、自己紹介ですよね?」
「うん……え? もしかして今の自己紹介だったの?」
「はい」
「頼子と俊之って?」
「俺の両親です」
……そこから? 親の馴れ初めからやろうとしてるの? 平然と言ってのける姿に、担任は思わず口元を引きつらせる。
小鷹 はぐれは一見普通の生徒だ。黒髪短髪の平凡顔、身長は同年代の平均くらい。目はちょっと死に気味のジト目で、さっきから表情は動いていないけども。制服は着崩すことなく着用しているし、ピアス痕だって見当たらない。
だが一瞬にしてクラス中の心が一致した。
『あぁコイツ、ヤバい奴だ』
この後、まさか頼子と俊之の波乱万丈なラブストーリーに号泣することになるとは、誰も予想だにしていなかった。
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