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周りの花びら達が元のスピードに戻り、
姫美ちゃんが屋上を見つめつつ、
あらら~、と困った声を出している。
携帯をスカートのポケットにしまい、
ノアの指示に従うのは誠にシャクなことなんだけど、
神々しい姫美ちゃんに屋上について聞いてみることにする。
「あのさ、うちの屋上って何かあるの?」
その質問に、大きくて綺麗な瞳が私を見る。
先ほどの風とランチクロス、意味深なノアの助言からして、
屋上に行くと攻略対象に出会うイベントがあることは
間違いはなさそう。
行く前に少しでも情報聞いておけば、
心の準備もしやすいだろう。
…というか、うちの屋上、本当は立ち入り禁止で
いつも鍵がかかっているはずなんだけどなぁ。
これもゲーム補正ってやつかな。
「あれ~?知らないの~?
屋上には、うちの学園の番長さんがいるんだよ~?」
「え。」
有名なのに~、と姫美ちゃんが言う中、
思いがけない言葉に硬直した。
ば、番長!?このご時世に!?
そんなものは、昔の話というか、
最近でいうとゲームの中の話だけだと思っていた。
番長といったら、
本当に高校生なのかと疑うようなおじさんヅラで
傷だらけの体と、昭和時代に流行った”短ラン”と呼ばれた
よくわかんない制服と、ペちゃんこの学生帽子とリーゼント、
そんなにおいしいの?と思うほど
長めの草をいつも口にくわえているイメージ。
喧嘩○んちょうの情報しかないや…。
「喧嘩強い3年生らしいよ~!
授業とかも来ないし学校自体もあんまり来ないらしいけど、
時々屋上にいるんだって~!」
「なにそれ、ゴリゴリの喧○番長じゃん。」
でも、さすがに乙女ゲームとして、
私がイメージしているゴリラみたいな番長ではないはず。
だがしかし、”番長”という、令和の時代にはミスマッチな設定。
「あとね、よく屋上に女の子連れ込んでるらしいよ~?」
いっきにイメージが、エロおやじに変わった。
待てまて!私が考えた設定なんだから、
もっと王道パターンなはず!
乙女ゲーで喧嘩が強くて女たらし…。
どのゲームでそんなキャラに出会っただろうか。
「白、ランチクロス取りに行くの?あたしも一緒に行こうか?」
ここまで話をしていて、姫美ちゃんは察したようだった。
心配そうに私を見ている。
すると、昼休みが明ける5分前の予冷が鳴った。
「いや。これは私の問題だから、
姫美ちゃんは先に教室戻っていいよ。」
「え!?1人じゃ危険だよ!噂だと、
番長さんは血も涙もない冷血な人で、
屋上のテリトリーに入られると誰かれ構わず
半殺しにするって聞いたよ!?」
このゲーム、恋愛ゲームじゃなくて、
格闘ゲームだったかな!?
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