スタート♥

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なんとかいつもの時間に支度を整え、 玄関の全身鏡で最終チェックをする。 最近暑いからブレザーの制服も中間服に変えた。 長袖を数回折って7分ほどにしたYシャツ。 紺色のベスト。 緑がかったチェックの膝上丈スカート。 赤いチェックのリボン。 うちの高校は制服がそこそこ可愛い。 うん。目元にうっすらクマができた以外はいつも通り。 特別可愛いわけでもないし、だからと言って 特別ブスなわけでもない(…はず)。 何かが特化して得意ってわけでも、 クラスの人気者っていうわけでもない。 いたって、” 普通 ”。 それが私の長所なのだ。 普通が一番!人生、目立つと ろくなことにならないし、 面倒に巻き込まれるのはごめんだ。 よし。と制服の裾を引っ張り、カバンを肩にかける。 すると、色とりどりの花がすでに店頭に並んでいた。 「おはよう、はーちゃん。なんとか間に合ったね。」 お父さんが大きな鉢を運びながら振り向いた。 おはよう。と返しつつ、深く一呼吸する。 朝の香りと共に、お花のいい香り。 そして、さっき食べた朝食のトーストの香りと、 お父さんの柔軟剤のにおい。 「あ。今朝、開店準備に間に合わなくてごめんね。」 「あぁ。そんなの気にしなくて大丈夫だよ。  子供は子供らしく、仕事のことは気にしないで。  沢山勉強して、楽しいこと沢山やりな。」 ニッコリと笑って、持っていた鉢を店頭に並べに行った。 いつも、仕事のこと気にするなって言われるけど、 自営業っていうのは大変だってことは見ていてわかる。 私も花が大好きだし、 店の手伝い大好きなんだけど…、な。 まあ今回ばかりは夜更かしし過ぎた私が悪い。 朝日を浴びて、 綺麗にディスプレイさえれた花々が輝く。 と、店前から私の、 ”エプロンをした優秀な目覚まし時計”こと、 お母さんが顔をひょっこりと出した。 「おはよう、はーちゃん!  カイト君迎え来てるよ!早くおいで~」 「…カイト?誰それ。」 いつも通りの朝のはずなのに、お母さんが聞きなれないことを言う。 ”特定の友達は作らない主義者”の私に、 朝、自宅にまで迎えに来るような人はいないはずなんだけど。 首をかしげながら店の外に出ると、 知らない人がお母さんと親し気に話をしていた。 「え。誰。」
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