スタート♥

3/9
前へ
/30ページ
次へ
同じ高校の制服を着ている男の子は 優しい笑顔でお母さんと笑い合い、 恐る恐る近寄ってきた私に気が付くと その笑顔を私にも振りまいた。 「おはよう、(はく)。  今日寝坊したんだって?めずらしいじゃん。」 「え。誰。」(再) 「…まだ寝ぼけてるの?」 警戒して眉間にしわを寄せる私を、 その子とお母さんはキョトンとした顔で見る。 じぃ…っと身を少しかがめて、 長身な彼の顔を下からじっくり見るが、 どう思い返しても知らない子。 というか、 1度見たら絶対忘れることのない、超絶イケメン。 そんな超絶イケメンが私の知り合いなわけがないし、 同じ高校にいるはずもない。 いたらもっと大変なことになっているに違いない。 「いや。ある意味すごく目が覚めたんだけど。  …どちら様でしょうか?」 「はーちゃん。  お隣さんで幼馴染の海翔君がわからないなんて。  もう一回顔洗っておいで。」 「カイト君?オトナリサン?オサナナジミ…?」 「どーしたんだよ。  やっぱりまだ寝ぼけてるなあ?」 いや。寝ぼけてんの、そっちの2人だよ。 私の様子を見て、2人とも楽しそうに笑い始めたけど。 私に幼馴染だなんてそんな、 よくある少女漫画みたいな設定の人物はいない。 ましてや、我が家と仲の良いお隣さんは、 子供がいない中年のオシドリ夫婦のはずだ。 そう思って隣の建物を見ると、 昨日はなかったオシャンティで綺麗な家が建っていた。 「あんrrrrrrれ?おっかしーぞぉ?」 その馴染みの夫婦の家は、オシャンティな家の隣に移っていた。 つまり、私の家と中年夫婦の家の間に、 見知らぬ建物が一晩で出来上がったことになる。 「一夜城かな…!?」 いやいやいやいやいや!そんなの物理的に無理だし。 第一、お母さんの記憶の改ざんまでされてるし。 そんなこと…。まさか。 「あ、あははは。まさかドッキリか!」 両手でお母さんに指を刺した。(ゲッツ) しかし、魚の死んだような目をした顔で、 物凄く冷えた反応を、実の母親からされる。 隣のイケメンのお兄さんは必死に笑いをこらえていた。 「ほら。あの。一般人にも  ドッキリ仕掛ける番組さ、あるじゃん!」 「…はーちゃん。もう、今日、学校お休みする?」 お母さんが心配そうに私の額に手を当てた。 それは演技でもなんでもない。 紛れもない本気(マジ)のトーンだった。 嘘、ウソ!?私がおかしいの!? 絶対おかしいのはそっちだって!
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加