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デフォルメキャラと
目の前のイケメンを見比べていたら、
ブルッと通知のバイブレーションで
携帯が揺れる。
ピンクのメッセージウィンドウが
アプリ内で表示された。
【 早速、攻略対象と出会えたみたいだね♥ 】
にこやかに拍手をする、
自称・恋の道化師ノアが表示される。
まるでこちら事が見えてるような内容。
一応、海翔くんに見られないように
携帯を自分に傾けた。
攻略対象…って。いやいや。そんな。
私がゲームで作ったキャラが現実に
出てくるわけないでしょ~。
たまたま、私が決めた名前が一緒で、
顔もちょっと似てるだけで…。
【 いや~それはさすがに無理だよ~♥ こんなイケメンなかなかいないって♥ 】
ん~。まあそうだよね~。これはかなり
私の好みに仕上げた攻略キャラ…って。
あんた、なんで私の心の中わかんの!?
え”ぇ”!?っと叫ぶところだったが、
一応電車内だし、目の前のイケメンに見
られると恥ずかしいので、
急いで口を押えてなんとか
喉の中間あたりで声を抑えた。
そういえば、昨日までのこのミニキャラのノア、
静止画だったのに、今は滑らかに動いている。
やっほー♥と手を振ってきたのが、
あまりにも現実味がなくて怖くなり、
全身の血がサーッと落ちていく感覚。
画面表示を消して、
いったんスカートのポケットに携帯を突っ込む。
いや。もう。頭がついていけないっす。
深ぁぁぁぁいため息をひっそりとする。
しばらくしてまたスカートの中の携帯が
ブルッと震えた。
諦めに近い呆れた顔をして、携帯を取り出す。
【 ちょっと~!ひどいよ~!♥ 僕がこれからのことを説明してあげようとしてるのに~!♥ 】
画面には腕を組んで、
プンスコと頭から煙が出ているノア。
ダメだ。もうこういう物だと
自分を説得させないと、先に進まないみたいだ。
あーもー。
今の状況が全然わかってないけど、
わかりましたよ。
これからのこと?私がわかるように?
説明してみてくださいよ?ノアさん??
【 あ。ノア、でいいよ~♥ やっと現実を受け止める心の準備ができたみたいだね~?♥】
とりあえず。♥をやめませんか?(ニッコリ)
【 それは無理だよ~♥ こういうキャラ付けだから~♥ 】
そこはせめて、「恋の道化師だから」と
言ってほしかった。
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