おこづかい制の泥棒

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「実は……弟の医療費なんですが……別で三十万が必要になってしまって……」 「三十万? 手術代で百万が必要って言ってたよね?」 「それとは別に……先進医療も受けた方がいいかもって」 「そうなのか……三十万ね……」  三十万なんて、おこづかい制の俺には用意ができない。  佐恵子に頼み込むか? いいや、そんなこと言えるわけがない。  でも、樹里亜が困っている……。  何かいい方法はないか。 「今まで貯めてたお金はどうしたんだ?」 「……一応、それを使えば今回の治療費は何とかなりそうなんですが……手術代をまた一から貯めないといけないなんて……滅入ってしまいそうで」 「そうだよな……コツコツ貯めていたもんな……」  樹里亜が自分で稼いだバイト代は、学費と生活費で消える。  俺が渡していた二万を、手術代の資金として積み立てていたみたいだった。  それを使えば先進医療を受けられる。でも、また手術代を貯め直さないといけない……全く順調にはいかないってわけか……。 「私……もう、限界です。勉強をする時間も取れないし、毎日バイトでクタクタだし……」  今にも泣き出しそうな樹里亜を見て、居た堪れなくなった。  その小さな体を抱き寄せて、頭を撫でる。 「大丈夫、俺が何とかするから」 「……え?」 「三十万だな。お安い御用さ」 「でも、これ以上准教授に迷惑をかけるわけには……」  上目遣いで直視されると、性的興奮が抑えきれなくなる。  俺は揺さぶられないように、天井を見ながら「心配しなくていい」と呟いた。  樹里亜は安心できたのか、俺の腰に手を回して強く抱き締め返す。  これ以上はいけない……やましい気持ちをグッと堪えて、体を離した。 「もうちょっと、頑張ってみます」  樹里亜はそう言ってから、研究室を後にした。  カッコつけてしまった手前、どうにかしないといけない。  誰もいない研究室で一人、三十万をどうやって捻出しようか必死に考えた……。
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