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負ける事考えるような奴は帰れ!
「勝ちましょうって・・・・。いきなりは無理じゃないかな。今はまだ、力の差が・・・・。」
石井会長の言葉を遮って、越前は厳しい口調でぶつける。
「戦う前から負けることを考える人はもう、帰って下さい。要らないんで。会長は試合の前から打てないんじゃないかと考えてるんじゃありませんか。だからヒットを打ったことがないんです。きっとヒットは一生無理ですね。」
「・・・・・・。」
厳しい言葉に俯く石井。
「勝つのは無理だと考えるんじゃなくて、絶対に勝つと考えるんだ。今日は死んでも勝つんだ。負けると思う奴はもう帰れ。会長の様な負け犬は去れ。」
越前は弱気の石井会長を激しく糾弾する。
「ちょっと、越前君。何てこと言うの。会長に謝りなさい。死んでも勝つという意気込みは大事だけど、今日は練習試合だから・・・・・。気負い過ぎだよ。」
咲良は窘めた。だが、越前は、
「謝りませんよ。っていうか、会長が皆に謝って下さい。試合の前に士気を挫く会長が何処にいますか?俺は練習試合も選抜予選も同じ。一戦必勝です。負けて良い試合など無い。その積み重ねが我々を上のステージ―に導くんです。」
と、言い切った。越前は普段は醒めているが、こと野球の事になるとどこまでも熱い。
「越前君、燃えていまスネ。私も彼に賛成。勝ちに行くベキです。」
「僕も賛成。心を燃やすべきだ。」
王と中沢がなんと越前に同調した。
「・・・・・。そうだね。越前君の言う通りだ。僕は戦う前からどうせ勝てっこないと決めつけていたよ。ゴメンね。」
皆の戦意が高い事を知り、石井会長は空気を読んで謝った。
「よし、皆。球技大会の汚名を晴らすのは今日だぞ。」
桃太郎が気勢を上げた。一年生は皆、勝つ気満々である。
「やれやれ、どうなる事か。」
黒田がそう呟いた。黒田・蛭田・不破は一歩引いてる感じである。手塚君はどう思ってるんだろう。咲良はその考えが気になった。
「会長、越前が済みません。ですが、彼の言う事にも一理あります。今の野球部に必要なのは負け犬根性を払拭する事です。その為の柱が越前です。迷惑をお掛けしますが、今は彼に乗っかろうと考えています。」
手塚は会長に越前の暴言を謝罪し、尚且つ、自分の考えを伝えた。
「・・・・・・。そうだね。今の野球部には越前君の様な人が必要だよ。」
会長はそれに理解を示した。手塚の気配りに寄り、上級生と下級生の分裂は防ぐことが出来た様だ。咲良は胸を撫で下ろした。
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