習志野キャプテン・久里

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習志野キャプテン・久里

「何をやっている。騒がしいぞ。」  咲良が振り返ると、そこにはユニフォーム姿の男が二人立っていた。恐らく習志野の野球部員であるという事は簡単に察しが付いた。 「く、久里さん・・・・・。」  林は掴んでいた愛菜の髪の毛を離すと、居ずまいを正す。林の様子からこの久里という男は、習志野野球部の主力選手なのであろうと咲良は思った。 「何をやっているんだ。女に掴みかかる等、男の風上にも置けん奴め。」  久里は林を一喝した。 「ち、違うんです。この女が俺の事を侮辱して・・・・・。」 「何を侮辱されたんだ。」 「俺を五流の人間だと。そして、勝手にスマートフォンで撮影して動画をSNSに挙げると脅されて。」  久里は愛菜に向き直って問うた。 「林の言ってることは本当ですか?」 「・・・・・。確かに五流の人間だと言いましたよ。でも先に侮辱して来たのはこの人です。うちを三流の野球部とか、リトルリーグと試合しろとか・・・・。」  愛菜が林を指差して訴えた。久里は咲良の方に向き直る。 「本当ですか?」  咲良はコクリと頷いた。久里は林の方に向き直ると言った。 「切っ掛けを作ったのはお前だろう。謝るんだ。」 「でも・・・・・。」 「同じことを二度も言わすな!」  久里は林を一喝した。真っ青になった林は愛菜の方に向き直ると、不承不承、頭を下げて謝罪した。 「私が悪かったです。許して下さい・・・・・。」  愛菜は鼻高々に腕を組んで勝ち誇った。 「分かれば宜しい。」  林は愛菜に言いたい事がありそうだったが、久里の手前、悔しさを押し殺している様子である。 「マネージャーの非礼、お詫びします。私の監督不足です。済みません。」  久里はそう言うと、傍らのもう一人の選手と共に、ミカエルの皆に頭を下げた。咲良は恐縮した。元はと云えばさしこ先生の詐欺的マッチメイクが原因だったからだ。 「いえ、こちらこそ。」  咲良も頭を下げた。釣られてミカエルの部員も頭を下げる。越前と愛菜だけは頭を下げなかった。 「不愉快な思いをさせて申し訳ありませんが、改めて今日の練習試合、お願いできますか?」  久里は礼を払ってそう言って来た。渡りに船である。 「こちらこそ。是非、お願いします。」  やった。試合が出来る!咲良はほっと胸を撫で下ろしたのだが・・・・・。 「久里さん。ちょっと・・・・・。」  林が耳打ちする。練習試合に来たのは青邦ではなく、ミカエルという馬の骨だとも言っているのだろう。話を聞き終えた久里は咲良に向き直る。 「今日の練習試合、相手は青邦だと聞いていたのですが・・・・。」 「・・・・・。はい。ちょっと、行き違いがあったみたいで。私達は千葉市にある聖ミカエル青春学園と言います。」  咲良は久里の顔色を窺いながら、言葉を選んで言った。 「聖ミカエル・・・・青春学園?変わった名前ですね。」 「ええ。キリスト教系の高校です。」 「・・・・・・・。」  久里は考え込んでる様子だ。そんな高校あったかなと思っているんだろう。 「去年の夏は、他校との連合チームで出場したそうです。」  林は久里に告げ口する。やっぱり嫌な奴である。 「・・・・・・・。」  久里は考え込んだ。向こうは試合をしたい様だが、どう考えても格が違う。しかし、ここまで来てしまってる以上、帰れとは言いずらい。林が非礼を働いた弱みもあった。 「お願いします。試合をさせて下さい。」  咲良の懇願に久里は戸惑った。 「まあ、そこまで言うのでしたら、試合をお受けします。」 「本当ですか!」
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