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「ヴァーチェ、データに異常は」
『ありません』
ステーションのAIは常に周辺のモニタリングを続けている。何かあればすぐにアラートを出すので、今まで沈黙してきたということは何も異常がないということ。同じだ、レオンと。
つまり肉眼で確認した、もう目の前に来ているのを自分の目で見て驚いたということだ。何が来るのか? いや、レオンは確かに言っていた。
天使。
『現時刻をもってすべてのシステムをダウンします』
「ヴァーチェ!? 何を言ってるんだ!」
突然のAIの勧告に全員が混乱する。ステーションでAIの機能が停止するというのは、ステーションはただの金属の塊になったということになる。各戦闘機は個人の操縦で何とかなるものの、AIのバックアップ前提で訓練されているため生存率が著しく低下した状態だ。
「本当に未知の生物からの攻撃なのでは!?」
「落ち着け! もし仮にそうだとしても俺たちはまだ生きてる!」
悲鳴のようなオペレーターの声に、ビジターはなるべく怒鳴りつけないように気をつけつつ励ますように言った。
「俺たちはAIに依存して生きてきたが、AI稼働停止訓練を受けてきたはずだ。全員訓練通りに行動しろ、指示は俺が出す」
力強いビジターの声にようやくほっとした様子でオペレーターも返事をした。AIに依存して生きてきた者たちにとってリーダーというのは必須である。
(ここから文字通り、俺の言葉一つに八十九人の命がかかってるわけだ)
ビジダーとてステーション生まれの三世、皆と思考力はそう変わらない。こういう時頼りになるのは、自分の意思で苦境を乗り越えてきた二世の世代。ここでは大尉なのだが。
(大尉?)
自分の思考にわずかに違和感を覚えた。そうだ、先程のヴァーチェの言葉。あれは突然トラブルが起きてダウンしたのではない。
(予定されていたプログラムを遂行するときの言い方だ!)
その決定権を持っているのは、施設最高責任者。
「クソ、嵌められた!」
「え!?」
「レスカ、ドルモのクソ野郎に通信しておけ! 最後の時が気色悪いテメエと一緒じゃなくてよかったってな!」
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