第1章 0.01ミリメートルの防御壁※

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第1章 0.01ミリメートルの防御壁※

 0.01ミリメートルのコンドーム。  これが、ぼくの身体を唯一守ってくれる防御壁だ。  性交渉を不特定多数とすればHIV、梅毒、クラミジア、ガンジダといった性病に(かか)る確率がグンと上がる。  梅毒なんてキスしただけで伝染(うつ)るらしい。昔は抗生物質が効いていたのに最近は効かないとか、罹る人が急増している……なんて書かれたネットニュースを目にした。  命を脅かす可能性のある病魔から身を守る。罹る可能性を激減させてくれるアイテム。  でも使い方を間違えれば意味のないもの。  心にも傷つかないようにするための膜を張れたらいいのに、なんてくだらないことを考えていれば、男のペニスがぼくの解された後孔に潜り込む。  まるで生でヤッているのと大差ない。  ペニスが脈打つ感触も、くっきりと浮かんでいる血管の一本一本、熱い体温をダイレクトに感じて、ため息をつく。  背後にいる男も「すごっ……生と変わんないじゃん」なんて、つぶやいている。  一番異物感のある太い傘さえやり越せば、竿(さお)の部分を飲み込める。 「あっ、ん……んぅー……」  中を、太く脈打つもので満たされると自分が“生きている”と感じられる。 「気持ちいい?」と男が覆いかぶさってきて耳元で(ささや)きかけてくる。 「いい、……すごい。きもちぃ……」 「オレもだよ。じゃあ、もっと気持ちよくなろうか?」  そうして男の顔と身体が遠ざかる。
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