第1章 0.01ミリメートルの防御壁※

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 男が短く喘ぎ、ぼくの身体の最奥に精液を吐き出す。  ぼくはベッドの上に倒れ込んだ。男のやわらかくなったペニスがズルリと抜ける。  全身にビリビリと電気が走っているみたいで、指一本動かせなくなる。  横目で、男がもったりとしている精液の入ったコンドームを外し、口を縛っている姿を眺め見る。箱ティッシュから取ったティッシュでくるみ、ゴミ箱へ投げ捨てた。  学校でコンドームのつけ方や男女のセックスのやり方を機械的に教わる。性病がどれほど恐ろしいものか、思春期に始まる射精・生理のこと、どうして赤ちゃんができるのか、そしてバース性のこと。  けど……どうしたら幸せな恋愛ができるのか、普通の結婚をできるのかを学校も、教師も教えてくれない。  そんなことは親や友だち、恋人に聞くべきことと一蹴される。  でも、友だちに聞いてもAV女優が男優に犯されるか、悪戯される内容のセックスが話題の中心だ。そもそもゲイでバリネコであるぼくにゲイ向けのAVを話す友だちは、中・高にいなかった。  親はというとぼくを養育し、“優秀なエリート”に育てること以外は、もっか興味がない。  あの人たちにとって大切なのは愛より金。金より名誉だ。
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