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「今週の土曜は休みだからデート直前に何かあったら話、聞くぞ」と言ってくれた康成の言葉を思い出し、ぼくは康成に電話を掛けた。
三コールめには『はい……』と掠れて、どこか気だるげな康成の声が聞こえた。『晃嗣、なんだよ。……めちゃくちゃ朝、早いな。どうした?』
かすかに『康成、まだ起きるの早いよ……もう少し、寝よ』と寝ぼけた男の声がして、ぼくはしまったと思う。
「ごめん、邪魔したね。彼氏さんと一緒だったんだ」
『えっ……それは、そう……』
「なんでもない。それじゃ……」
電話を切ろうとしたら、『待て待て待て!』と連呼する康成の耳をつんざくような大声が聞こえて、耳からスマホを離しkた。
『平気、平気だから。何があった?』
『康成ー、誰と話してるんだよー。浮気かあ? オレと言う恋人がありながら……女かよ!?』
『アホなこと言うな! 俺は浮気しない主義だって何回も言ってるだろ。ダチだよ、ダチ、男! おまえはもう少し、寝てろ』
電話口で恋人と言い合っているのを仲がいいなと思いながら、受話器のボタンをタップしようとする。が――。
『ほんとか? だったら――ああ、なるほど。わかった! “恋愛初心者のおこちゃまくん”からのヘルプなわけか。それなら仕方ないわ!』
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