第1章 0.01ミリメートルの防御壁※

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 男に手首を(つか)まれる  うわ、まだ何かあるのかよってウンザリする。 「なんですか?」 「ヤッてそれでポイなんて、あんまりじゃない!?」 「それが目的でここまで来たんでしょ? 一回でオッケーっていう話だったじゃないですか」 「けどさ、普通はもっと楽しまない? バーでも話が盛り上がったじゃん!」 「そうですね、就活の際に役立ちそうなお話や有益な情報を聞けて、とても勉強になりました。……追加で五千円、お支払いしますね」  カバンから財布を取り出そうとすれば、男に止められる。  男がひどく疲れた顔をしているのに、笑う。  だって前回、掲示板を経由して会ったアルファの男は「五万寄越せ」って、ぼくを脅して最後には殴りかかろうとしてきたから。 「待ってよ。何、オレ、秋くんに買われたわけ?」 「そうですね、あなたの貴重な時間を買わせていただきました」  男は口元をひくつかせた。手首から両肩へと置かれた手に力がこもる。 「何それ。オレはきみと仲良くなりたいって思ったから誘ったんだよ?」 「だから寝たんです。こういうのを“一夜のアバンチュール”って言うんでしたっけ? まっ、いいや。もうセックスは終わりました。先ほども『気持ちよかった』と言っていましたよね。目的は達成したはずです」
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