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男に手首を掴まれる
うわ、まだ何かあるのかよってウンザリする。
「なんですか?」
「ヤッてそれでポイなんて、あんまりじゃない!?」
「それが目的でここまで来たんでしょ? 一回でオッケーっていう話だったじゃないですか」
「けどさ、普通はもっと楽しまない? バーでも話が盛り上がったじゃん!」
「そうですね、就活の際に役立ちそうなお話や有益な情報を聞けて、とても勉強になりました。……追加で五千円、お支払いしますね」
カバンから財布を取り出そうとすれば、男に止められる。
男がひどく疲れた顔をしているのに、笑う。
だって前回、掲示板を経由して会ったアルファの男は「五万寄越せ」って、ぼくを脅して最後には殴りかかろうとしてきたから。
「待ってよ。何、オレ、秋くんに買われたわけ?」
「そうですね、あなたの貴重な時間を買わせていただきました」
男は口元をひくつかせた。手首から両肩へと置かれた手に力がこもる。
「何それ。オレはきみと仲良くなりたいって思ったから誘ったんだよ?」
「だから寝たんです。こういうのを“一夜のアバンチュール”って言うんでしたっけ? まっ、いいや。もうセックスは終わりました。先ほども『気持ちよかった』と言っていましたよね。目的は達成したはずです」
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