Prologue オメガバース

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Prologue オメガバース

 人間は万年発情期の生き物だと言われている。  中でもオメガの発情期は、とりわけひどい。  見境なく男女のアルファの理性を骨の髄まで溶かし、彼らから知性を奪い去る。  花が子孫を残すために甘い蜜を発し、昆虫たちをおびき寄せて受粉するように、オメガはオメガ特有のフェロモンで人々を誘う。オメガの本能が強い者はベータや同種のオメガすら惑わす。  そんなオメガを犯すと同時に守るのもアルファだ。  男女が結婚するように、アルファとオメガが番となるのは、しごくとうぜんのこと。この世の道理だ。  そして運命の赤い糸で結ばれたアルファとオメガは“魂の(つがい)”という。  けっして、だれも邪魔はできない。相性百パーセントの関係。  番う前から魂レベルで強固な絆によって結ばれている。  だが出会える確率は天文学的な確率だ。  人の寿命は最長で百五十。  しかしながら“魂の番”と出会うには、幼少期から地球上の陸地をすべて渡り歩いても見つけられないという。つまり百五十年かけても、運命の相手は見つからないのだ。  だから多くのアルファとオメガは、手近にいる心を通わせた相手と番うケースが圧倒的に多い。
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