789人が本棚に入れています
本棚に追加
02.ニコレッタ、捨てられるらしい。
苦笑いしながらが説明を続けるジョルジョ。
私の洗礼後、聖魔法の素質が強く出ていたことを、父は誰にも報告することなく屋敷の者にも口を閉ざすよう命じ隠そうとしていたらしい。だが教会側からしっかり王家に報告が行ったようで、そのまま王太子との婚約が決まったようだ。
王太子はこの時4才。王家や貴族って大変だなと思った。
そして今回、妹にも弱いとはいえ聖魔法の素質が認められた。
ロザリアの鶴の一声で私は処分されることになった。
私と取って代わりたいと……
「力及ばず申し訳ありません」
「いや、なんとかできんの?さすがに死にたくはないんだけど?」
そう言われたジョルジョが目をそらす。
「森に、近所の森に捨ててこいと……お館様が」
「おい。私こう見えてもまだ2才。分かってる?」
「存じ上げてます」
「さすがに死ぬだろ?」
「ニコレッタ様は賢いので、ワンチャンあるのでは?」
ワンチャンって……ナシ寄りのナシじゃね?
「ちなみに、その森は作物も豊富で兎とかの小動物もいたり?」
それなら何とかなるやもしれん。
「作物は、豊富で、小動物は……いるかも、です」
「歯切れが悪いな。ちなみになんて言われてる森?」
「不帰の森、と申しまして……」
「おい。可愛くない名前だな」
ジョルジョが「ヘヘ」と鼻下を指でこすりながら笑う。可愛くないよおっさん。
とにかく、決まったことは仕方ない。
案外と何とかできるかもと思うとこにして色々考える。
今から準備して必要最低限の物を備えなくては。
「では、行きましょうか」
「えっ今?」
私の反論にきょとんとするジョルジョ。いや今はさすがに唐突じゃね?
「唐突すぎじゃね?」
「いえ、私も今さっき言われたもので……仕方がないのでは?」
お前……
こうなってしまえば反論は無意味なのだろう。
せめて何か……食器類?いや、かさばるな。武器を、かろうじて握れるナイフなんかがあればワンチャン、そうだ!魔法のバッグとかあるだろ!魔法の世界だし!
「魔法のバッグとか、色々いっぱい入る奴ぐらいくれても良くない?」
「そんな高価なものを所望されましても……」
「くっそ!じゃあナイフとか、ダメならせめて着替えくれよ!」
「何も持たせるなと……お館様のご命令です」
ため息をつきつつ首を横に振るジョルジョ。お前に人の心は無いのか!
こうして私は、ギリギリと歯ぎしりしながらも男爵家の所有する馬車ではなく、乗合の小汚い馬車にのりその森まで移動した。
御者を待たせ森に入る私たち。
手を繋いでおじじとお散歩。そんな雰囲気で森に入る。現実は全然違うがこんなシチュエーションでも手を繋いだそのぬくもりに泣きそうになる。ってかおじじ震えてる?
ジョルジョが尋常じゃないぐらい足を震わせてるので、「もーいーよ。世話になったね」と言って帰るように促した。
ジョルジョが驚いたような表情をした後、涙をタラリと流し「ごめん、なさい!」そう言って走って帰って行った。今のだけ見れば感動の別れのシーンのように見えるが実際違うからな。
無事に再会できたら髭毟ってやる。
さて、どうするか。
私は目が見えるようになってから魔法がある世界だと知り、必死で魔力というものを鍛えていた。正直自信はある。異世界あるあるだからな。魔力は使うほどに多くなる。愛読書にはそう書いてあった。
はじめは毎朝マリカが中央の天井付近に<照明>と言って明かりをともすのを見て、これは便利と夜中に光らせて遊んでいた。そして初めての魔力切れ。ぐるぐる視界が周りそのまま意識を失った。
そんな経験を何度も繰り返しながら、私の中の魔力が多くなっていることを感じ今日まで訓練を繰り返していた。
水の玉を作り出し、魔力切れでびしょぬれになった時は恥ずかしかったが、「あーうー」で乗り切った。「おねしょじゃないもん!と叫びたかったが……
さて、今さら来た道を戻り森の外に出たとて街はどっちだという状態だ。まずはここらに拠点でも作るかな?
そう思って周りを見渡すと、おーキノコとか結構生えてるじゃんかー!そう思って適当に収穫してゆく。スカートの裾を上げ大量に確保する。生足が出ていようが誰も見てないから問題ないだろう。そもそも私2才だし?
地面にばさっと収穫物を置いてジッと見る。目に魔力を籠めると目に映るものの情報が見えるのだ。
その鑑定魔法により毒を省いていくが、毒ありも多く食用は結構絞られるようだ。
ワライダケ[毒]、ツキヨタケ[毒]、テングダケ[毒]、ヌメリササタケ[食用]、カキシメジ[毒]、ドクツルタケ[毒]、ハナイグチ[食用]、ニセアブラシメジ[食用]。
それでも中々の収穫じゃないか?と嬉しくなってきた。
ヌメリササタケにハナイグチ、ニセアブラシメジか……前世では食べたことない種類だが、まずは焼こう。
試しに地面に石を丸く並べその中央に拾った生木を置き、その生木の水分を吸い取るイメージで魔力を籠める。しわしわと枯れる勢いで生木の水分が抜かれたので、魔力を籠めて火を付ける。
その上に魔力で土の板を作りそれにさらに魔力を籠め強化する。かなり固くなったので大丈夫かな?鑑定すると鉄板となっている。さすがに魔力がグッと減ってる気がするがまだ多少の余裕はあるようだ。
水魔法で空中に丸い水の塊を出し、それでキノコを軽く洗ってから熱した鉄板に並べると、水分を含んでいるからのでジュっと音がするので思わず逃げた。
10分ほど焼くと少し良い匂いがただよってきたので、2本の小枝ではさんで食べる。
うーん。味はあまりしないが仕方ない。
鉄板に引っ付いたのをはがしながら何とか食べ終わり、お腹を満たされ眠くなるがまだ寝床を確保しなくては……そう思いつつも幼い体に負け、倒れ込むように眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!