502人が本棚に入れています
本棚に追加
05.ニコレッタ、お着替えしてみる。
おじさんに渡された袋を持って部屋へと入る。
着替え用の部屋なのだろう小さな部屋には姿見が……初めて見る自分の顔に驚愕する。めっちゃ美少女じゃん?薄いブロンドの髪に少し焼けた肌。アンバランスだけどそれがイイ!そんな美少女な私を見ながら、私は愕然として膝をつく。
ださい……空前絶後にだっさい!
温かければ良いや、と思って身につけていた毛皮のコート……コートのつもりだったんだがなんだこれ。つぎはぎだらけの毛玉かな?良くお姉さんたちは私をここに入れてくれたな?
その事に感謝をしつつ躊躇無くすっ裸となる。
鏡張りだからめっちゃ恥ずかしい。慣れない自分の体を直視してしまい若干の混乱が生じる。だがこのままで良いはずもなく袋から適当に服を取り出すと、そのごわごわした下着の感触にテンションが下がる。
そうか……
一応貴族だったいつもの衣服は、それなりに上等なものだったんだな。
そう思いながらも着替え終わって鏡を見ると、あらま可愛い!我ながらお人形さんみたいだなと思った。
少し高揚しつつ部屋を出る。
私を見て驚く2人。
「まあまあまあまあ!」と寄ってきて私を抱きしめるお姉さん。
「おい、見違えたな!」そう言って頭を撫でようとした手をお姉さんにパシリと弾かれるおじさん。どことなく悲しそうな目をしている。仕方ないな。世話になった駄賃だ。
「お姉さんも、お兄さんもありがとうございます!」
そう言って2人まとめて笑顔を振りまいておいた。
それからまた相談タイム。
お姉さんが受け取ったカードは住民カードというもので、身分証明書になると言う。お姉さんが保証人になっているようで、「もうあなたは娘のようなものよ」と言われ少し涙が出た。
お姉さんの名前はエレナ。普段は冒険者ギルドの受付をやっているが、ローテーションでこの東口の門番の相談役をやっているのだとか。やっぱりあるのか冒険者ギルド!
それと、この門を抜けると、街と言うか王都だった。王国の主要都市である王都ユリシス。近くて便利なのでまた来よう。
そしておじさんはこの門番を守る兵士でノルベルトと言う。一応ここの兵士長をしているそうだ。「偉いんだそ!」と言っていたので「すっごいね」と言ったら喜んでくれたようだ。
そう言えばと猪肉の事を思い出す。
あれ、どこおいた?
キョロキョロさがしたら入り口にある棚に置いてあった。
それを持ってきて2人に見せる。これを売って穀物、米や小麦粉が欲しいことを伝えると、またエレナがシャシャシャと何かを書き始めた。
ノルベルトが「またか……」と小さくつぶやいたが、またその紙とお肉を持って出ていった。
ノルベルトが居ない間に、冒険者ギルドの話を聞く。
私は強いので猪とか兎肉、キノコとか薬草とかシロップもあると相談してみる。特にシロップについては念のため持ってきたスチールの瓶をお礼も兼ねてエレナに渡すと、指にたらしてぺろりと舐め驚いていた。
「こんなのどこで……」と言っていたが一応企業秘密にしておいた。
お姉さんが砂糖なんかは貴族じゃなきゃ手に入らないし、こんな優しい甘さのもの食べたことがないと言うので、もしかしたらメープルシロップなんかは出回ってないかもしれない。
いや、そろそもメープルシロップって雪解け時期とかに採取するんじゃなかったっけ?今更そんなことを思い出したが異世界だからで納得しておこう。
普通に売ったら私の手のひらに乗るサイズで金貨1枚、10万ルビーになると言う。エレナにお礼だと言ってみたが、流石にこれは貰えないと言われてしまった。うーん、もっとたくさん持ってきたら貰ってくれるかな?
それはまた今度と諦めたが、この際だからと孤児でお金使ったことがないと言ってみる。お姉さんは泣きながらお金について説明してくれた。なんだか悪い事しちゃったかも。
メープルの相場と言われた金貨は10万ルビー。銀貨が1万ルビー、銅貨が1000ルビーだと言う。一般的な食堂で銅貨で定食が食べれるらしいから日本円と変わらない感じかな?と思った。
確かに10万円の物をあげるって言われて素直に貰うのは無理かもね。
それ以下の細かい貨幣は無いが住民カードには1ルビー単位で記録されるらしいので、もっぱらそれでやり取りをするようだ。電子マネーが当たり前の世界なんだね。
冒険者ギルドの報酬なんかも住民カードに直接入る。便利だな。
さっきの住民カードもそれに指を押し当て、エレナが杖のようなものでちょんとやってくれたので、それで登録完了とのことらしい。登録後は本人から以外のお金の引き出しが制限されるのだと教えてくれた。
本人が死亡した場合は、手続きが必要だけどその遺族やそれに近しい人も引き出せるようになるとか……ちょっと物騒な気もする。仲良くなって殺して奪え的な?この発想自体がやばいのか。
エレナとの話をそれなりに聞き終わった頃、ノルベルトが返ってきた。また汗だくで息を荒くしているが、「ノルベルトさん、ありがとうございます」とスマイル付きでお礼を言うと、「いいってことよ!」と大きな袋に入った何かを手渡してくれた。
想像より重かったそれにバランスを崩しそうになるが、身体強化を使って堪える。
「ほお。ニコちゃんは身体強化も覚えているのか。ちっちゃいのに凄いねぇ」
「ちっちゃいは余計だし、私、結構強いよ?」
私の返しにハハと軽く笑いで返すノルベルト。
私は、少しワクワクしながら袋の中を覗き込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!