06.ニコレッタ、初めての冒険者ギルド

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06.ニコレッタ、初めての冒険者ギルド

ノルベルトから渡された袋の中を開く。 中には結構な量の米が入った袋と小麦の袋が入っていた。これは、どっちだ? 「この小麦の方ってパン用?お菓子用?」 「お菓子用ってお前、パン用に決まってるだろ?それともお菓子用が良かったか?」 「いや、大丈夫。確認しただけ」 これでとりあえずパンはできる。今日に備えて森に自生している干しブドウで天然酵母は作成済みだ。この世界は異世界あるあるの黒パンとかでは無いようだが、固めのパンらしいのでふわふわパンが食べれることに少し興奮。 そもそもこっちに来て固いパンすら食べたことすらないけど。屋敷では離乳食だったし。 早く帰らなければ!ふわふわパンとご飯が私を待っている! 私は笑顔で手を振って2人と別れ森へと帰って行った。 その帰り道、すれ違う人たちの冷たい視線を浴びることは無く逆に見惚れるような視線もちらほら。生憎その視線にニコレッタ本人は気づいていなかった。 帰ってきた私を、フェルが『大丈夫だったか?ケガとかして無いか?』と心配してきたので、大丈夫と抱き着きまたもふってみた。はー癒される。 その数日後、私はふわっふわのパンを2斤焼き上げ再び東門に足を運んだ。 やっぱり竈の火だと加減が分からず何度か焦がしたりしたけど、それはフェルが美味しく食べてくれた。 一口で丸呑みして『美味しいぞ?』と言ってくれてたけど絶対嘘。綺麗に焼き上がったのは目の色変えて食べてくれたからね。でもその気持ちは嬉しいからいっぱい撫でた。というかただ私がもふもふしたっかっただけだけど。 東門の詰所を訪ねるとノルベルトはいたがエレナはいなかった。 「エレナなら今日はギルドの方だな」 そう言うノルベルトに食パンを渡すと、一切れちぎって食べて驚きで固まっていた。「まさか御貴族様のところで食べるパンみたいなのが食べれるなんてな!」と興奮気味に喜んでくれれた。 そしてエレナのいる冒険者ギルドを目指してノルベルトに手を引かれ歩き出す。 初めての王都の賑やかさに少し興奮してしまう。 ノルベルトの説明ではこの東地区は主に冒険者が多い街で、安くてうまいものがいっぱい集まっているそうだ。私が笑顔を向けると、途中の屋台で串焼きの肉を買って手渡してくれた。 肉はジューシーだが食べ慣れた塩味だった。味に変化がほしいが、王都に醤油とか味噌とか売ってないかな?せめて胡椒とかほしいな。 ノルベルトに胡椒について聞いてみると、御貴族様なら使ってるだろうなと教えてくれた。胡椒って何からとれるんだっけ?唐辛子もちょっと違うんだよなー。そんなことを考えながら串を食べ終わり、近くの店のゴミ箱に投げ入れた。 「邪魔だ!」 突然の大きな声にビクッとする。 その声のした方向に視線を向けると子供が1人倒れている。ギャン泣きしているその子に近づくと、その傍にいた冒険者風の男が「うろちょろしてるからだ!」と言って怒鳴り散らしていた。 その冒険者風の男には周りからも非難の声が上がっているようだ。思ったより少しは優しい世界かも。見て見ぬ振りをしない街の人達にホッとする。東京だったらスルーかスマホで撮影だよねきっと。 「ニコちゃんすまんな。ちょっと待っててくれるか?」 そう言ってノルベルトが冒険者風の男に向かって歩きだす。 「お仕事頑張ってね!」と声を掛けると「おう!」嬉しそうな声が返ってくる。 私は転んでいる男の子に近づくと擦りむいた膝に手をあてる。 「もう大丈夫だから。男の子は泣いちゃだめだよ?」 そう言って癒しの魔力を籠めると男の子の膝の傷はすっかり消えてなくなった。 「お姉ちゃんは、聖女様?」 私は男の子の唇に指をあて、「内緒ね」と言うと黙ってうなずいてくれた。その顔は赤く染まっている。惚れさせちゃったかな?なんちゃって。 「待たせたな」 戻ってきたノルベルトが再び私に手を出してギルドまで歩きだす。ノルベルトが瞬時に組み伏せたさっきの男は駆け付けた兵士に任せてきたようだ。 道すがら、すれ違う人たちにノルベルトが「いつの間に子供出来たんだ」などと揶揄われながらも冒険者ギルドに到着する。 受付にいたエレナがすぐに走ってきて私を抱きしめてくれた。 エレナに会いに来たことを伝えた後、手に持っていたパンを渡すとノルベルトと同じように一口ちぎって食べる。目を見開き戸惑った後、飲み込んでうっとりするエレナ。 受付にいる他の職員に何やら指示を出し、ギルドの個室に手を引かれ案内されると、「丁度お昼だから一緒に食べようね!」と一緒に昼食を頂くことになった。 ほのかに甘いフルーツジュースを貰って飲みながら、用意してくれたお皿の上で切った食パンにお肉を挟んでサンドイッチを作る。もう一切れには持参したメープルシロップをたっぷりとかけて2人に勧める。 あわわと驚きながら遠慮する2人に「食べないとすぐに駄目になっちゃうよ?」と首をかしげてみれば、2人も顔を見合わせお肉の方からパクリ。エレナが「うぅ~ん!」と艶っぽいい声が漏れ、ちょっとドキっとしてしまう。 ボア肉サンドを食べ終わりうっとりと顔を赤らめるエレナ。そしてメープルたっぷりのパンを半分に折り、溢れたメープルは指で掬って舐める……その仕草にちょっとドキドキするけど私はノーマルだったはず。 そして一気に口に押し込んで……「はぅん!」と言うエレナを見て、自分がはたしてノーマルだったのか自信が無くなってしまった。 「とっても美味しかったわニコちゃん。早速だけど私の娘にならない?当然だけど衣食住は100%保証するわ!」 「魅力的なお誘いだけど、ごめんなさい」 その言葉にガッカリしつつも優しく抱きしめてくれたエレナはとっても甘い香りがした。 ノルベルトは黙々と口に頬張りリスのようになっていた。 私はエレナの持参したおにぎりを貰って大興奮。ちょっと涙が出たのはがっついて喉に詰まってしまったからだ。塩味はもう飽きてるけど、出ちゃうんだから仕方ないよね。
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