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08.ニコレッタ、狩りと魔石と好奇心
拠点で楽しい生活を続ける私とフェル。
拠点もかなり充実してきた。
私の作った棚には、王都で買い揃えた食器類が綺麗に並べられている。
室内の竈もより使いやすく改良を重ね、毎朝のパンを焼いたり、料理を煮炊きするためにと2つの掛口を作って鉄鍋を置けるようにした。そこでご飯を炊くことにも慣れ、毎日美味しい食事に堪能していた。
鋼鉄やスチール、アルミや陶器と材質を変えることにもかなり慣れ、様々なものを瞬時に作り出すこともできるようになった。
そんな生活を送るこの不帰の森だが、森の外周では<フォレストウルフ>や<ガルム>といった弱い魔物と兎や栗鼠などの小動物がいる。
普通の動物と魔物の違いは体内に魔石を持っているかどうかとのこと。
さらに森を少し中に入ると<リトルボア>や<エルク>といった少し大型の魔物と、猪や鹿、黒毛の豚までいる。
そして拠点のある中心部付近には、<ワイルドボア>や<ブラックオーク>、<ビッグバイパー>などの大型の魔物が生息している。
もちろんフェルの魔力に守られている私には一切手を出してこないが、いずれも高ランクの冒険者でも苦戦してしまう強い魔物だと言う。
それでも一部の選ばれた高ランク冒険者たちならその三種の魔物に太刀打ちはできるのだが、主であるフェルがいるのが分かっているこの中心部には誰も近づこうとしないのだ、とフェルが得意げに教えてくれた。
私がギルドに納品しているワイルドボアの毛皮や肉の需要は高く、高値で買い取ってくれるのだ。ボイズンバイパーの皮も高く売れると後から聞いたので、最近はそっちも少し狩らせてもらっている。
一応は森で共存する仲間たちだ。乱獲をする気はないが、あまり増えると他の魔物や動物にも影響があるとのことで、フェルから狩った方が良いだろうと言われている。
以前はフェルが定期的に数減らしを行っていたらしい。
ブラックオークについては今のところ需要がないが、数減らしに狩った際には魔石を取り出して定期的に納品している。
魔石についても色々教えてもらっている。
これが前世で言えば電池のようなもので、私の前世で読んでいた愛読書にも色々な使用法が書いてあったが、やはりこちらもで魔道具用にと一定の需要があるのだとか。
中身が無くなれば魔力を籠めれば補充できるのだが、ある程度補充回数をこなすと劣化してしまうので、定期的に取り換える必要があるのだ。
常に一定の需要があり大きな魔石程、高く売れる魔石。
試しにワイルドボアの魔石を鑑定すると、<ワイルドボアの魔石 685/692>と表示された。軽く魔力を流そうと念じるとすぐに692/692となったのでこうやって補充して使うのだろう。
そんなある日、毎日消費しきれていない魔力を勿体ないなと思った私は、両掌を近づけ魔力だけを放出して集めてみた。光の玉がギュンギュンと集まる感じがして少し楽しくなってきた。
フェルがそれを見て『力が凝縮されていて危ない感じがする』と言っていたが、その時は暇を持て余していた私が、好奇心に負け魔力を籠め続けてしまったのだ。
そして光がパッとはじけるように広がった後、胸の前で向い合せるようにしていた両掌の間から、こつんと黒い石が落ちてきた。
『ニコ、それ魔石じゃないか?』
「なんで?」
思わず聞き返してしまった。
足元には見慣れた魔石と思われる黒い石。
鑑定すると<魔石 226/226>となっている。
「魔石だね」
私の言葉に口を大きく開けるフェル。何か口に突っ込んであげようかな?
『これは誰にも知られてはいけない気がするな』
「そうだね。面倒なことになる予感がする」
こうして、その魔石は何かの時に使えるだろうと拠点の棚に無造作に置いておいた。魔道具を入手したらそれに使おう。名前の入っていない魔石なんて無いだろうし自己消費するしかないと思った私だった。
それから数週間。
私はまた魔石を量産してしまっていた。恐るべし我が好奇心。いや自重しろよとは思ったが、欲望に忠実な自我が出てきてしまったのだから仕方ない。
魔力を一気に籠めたらどうなるだろうか?微力な魔力を長時間籠め続けたらどうなるだろうか?属性をこめた魔力ならどうなるのだろうか?そんなアホ丸出しの好奇心により、秘匿しなくてはならない魔石が棚に並べられている。
弱い魔力を籠め続けると10/10という屑魔石に、一気に魔力を籠めれば1862/1862と言う最上位の魔物の持つ魔石に匹敵する魔石ができた。大きさもかなり大きく、これを売ったらかなり高額になりそうだ。
さらに火属性や風属性を籠めると、どちらも魔力が安定せずに魔石にはならなかった。特に火属性の時はちょっとした爆発が起きたが幸い前髪の犠牲で済んだ。だが手鏡を見た私は「暫く街には行けないな」と1人つぶやいた。
水属性を籠めると、水色のゼリー状の何かが出来上がり数日で魔力が無くなりカラカラの何かが残った。土属性だと鋼鉄ができてしまうだけだった。そして最も危ないと思ったのが聖魔法をこめた時だ。
驚きの鑑定結果は、<聖魔石 2684/2684>というピンク色の直径3センチほどのつるんとした球体の魔石。まさかと思いつつそれを手に持ちながら、反対の指を包丁でちょんと切りつけると、次の瞬間には傷は塞がっていた。そして聖魔石の魔力は10減っていた。
私はサササとアルミのペンダントを作り、その聖魔石を埋め込むとセラミックでチェーンを作りフェルの首に付けてあげた。
フェルはとても嬉しそうにしてそれに頬ずりし、『私はケガなんてしないんだがな……まあニコからの贈り物だ。大切にしてやろう』と言っていた。フェルのふわふわな尻尾もパタパタと左右に揺れ、私もそれを目で追いながら頬をゆるませた。
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