17人が本棚に入れています
本棚に追加
07.復讐
「そう言えばステータスを鑑定できるマジックアイテムなんて無いかな?」
「それなら高額だが入手は可能だ。だが何に使うんだ?」
「それはまあ、人探し?」
咄嗟に出た言い訳だが意味不明だな。
「意味は良く分からないが、必要ならギルド長にでも相談するんだな」
「金貨200枚ぐらいで買えると思うけど、そう言えばセイジはギルド長からそれ以上ふんだくってたわね」
ローランドの言葉にカトリーヌが補足する。
「ふんだくってたなんて人聞きの悪い。まあ、あれぐらいの素材はゴロゴロ収納に眠ってるけど……」
「ねえ、私も妾にする気はない?」
すぐ隣にカトリーヌが座ると体を寄せてきた。
「ちょっと!」
「冗談よ」
レベッカに手を引かれカトリーヌが舌を出す。
「冗談の目では無かったな」
ローランドが茶化すが、背後にはフェランが……
「男に興味はないか?」
鳥肌が立った。
「いや、みんなはっちゃけすぎだろ……有能な召使はどうだ?」
ローランドまで揶揄ってくる。
ローザは無言で近づき裾を摘ままないでほしい。ドキッとするから。
「まあ、今の情報の対価に多少は報いたいとは思うよ」
そう言って俺は指輪とペンダントを2つづつ置いた。
それぞれ力、守り、素早さ、魔力の能力値の上昇する奴だ。
「好きに分けてくれ」
そう言った直後に4人はそれをじっくり確認し相談を始めた。
「じゃあまた、1週間後に」
笑顔になった4人と別れ、俺は受付に足を運ぶとギルド長にアポを取る。
結果、収納の中に眠る素材をいくつか取り出すと、その場で鑑定用の眼鏡と交換できた。ニヤニヤと笑みを浮かべながら、ダークウルフの毛皮に頬ずりするギルド長にドン引きだった。
それからホテルに戻ると部屋に夕食を運んでも貰う。
夜は2人で適度な運動をしてまた朝を迎えた。
朝食を食べ終えた俺は指輪に魔力を送りアーマーを装着すると、封印していた暗黒仮面を取り出し装着する。その黒づくめな姿にレベッカは素敵!と褒めてくれたが、それが一般的な感想だと信じたい。
仮面の下には鑑定眼鏡をかけている。
そのまま牢獄の1階層に2人で転移すると周りを警戒しながら進む。
人の寄り付かないダンジョンだ。
さすがに戦闘があれば音で分かるだろう、と次の階層までの道を適度に寄り道をしつつ進んでゆく。
道すがら、3階層で虹箱だ出た。
こんなタイミングで、と一瞬思ったが素直に嬉しいので早速開封すると妖夢之短剣(魔)が出た。
妖夢之短剣(魔):籠める魔力により強い催眠状態へ誘う
レベッカに渡し、ピンチの時は使うようにと剣とは反対側の腰に装着させた。
そして6階層までたどり着くと、すぐに怒号が聞こえてきた。
警戒しつつ壁に張り付く様にして覗き込むと、勇者がビッグキラーアント(土)の軍勢と戦っていた。
隣で必死に大きな盾を構えて攻撃を往なしているのは騎士団長様かな?そう思って見ていたが、見覚えのある顔に思わず唸る。
あの時の兵士じゃねーか……
追放された際、俺に助言をしてくれた兵士、マルセルさんだった。
まさかこんなところで会うとは思ってもいなかった。
前方に視線を戻すと、勇者の後方には情報通りに5人の魔術師と思われる女達が、代わる代わるに魔法を飛ばしている。
そして俺は、勇者の頭の上に表示されているステータスを見てがっくりと肩を落とす。
能力値は俺の10分の1にも満たない数値であった。
確かにローランドさん達よりは強いが……
多数のスキルも得ているようで、中には能力値を倍増してくれる破格なスキルもあったが、お世辞にも俺に勝てるとは思えない。
これが、この国が異世界から拉致してまで育てたかった力だと言うのか……
気づけば俺は勇者の前にふらふらと歩いていた俺は、勇者の目の前にいた蟻達を殲滅した。
「誰だお前!俺の獲物を奪いやがって!死にてーのか!」
クズが何かを叫んでいる。
「あ?無視してんじゃねーよ!何とか言えよおらっ!」
口汚く吠えている勇者に視線を向ける。
「黙れ」
俺は鎧の威圧をオンにして殺気を放ちながら龍弥を冷たい目で見ている。
「な、なんなんだお前!俺は、勇者だぞ!」
「黙れと言ったんだ。お前は、相変わらず馬鹿なんだな……」
思わず笑ってしまう。
仮面をしているから見えないだろう。
「な、な、な……」
殺気を放ったままゆっくりと近づく。
「久しぶりに見たが、全然成長してないんだな」
そう言ってやっと仮面を外す。
「お、お前は黒田!オマケ野郎がなぜこんなところに!それにさっきのは……まあそんあことはどうでもいいか!それなりに戦えるようにはなったってことだな。手駒が増えるのは良いことだ!このおっさんや、女どもはちっとも役にたたねーからな!」
龍弥の頭の悪い言い分に、呆れてため息がでる。
「いい加減その口を閉じろ。くせーんだよ」
言ってみたかったセリフを言ってみたが思ったより恥ずかしかった。
ポカンと口を開けた唖然としている龍弥。
「ぐはっ!」
俺は少し赤らむ顔をごまかすように龍弥の左腕を切り飛ばした。
「あぁぁ!なんで、なんでだ!何してる!早く回復を……」
「動くなよ」
俺は後ろに控えている魔導士たちを睨みつける。
膝をつく者、気絶しそうになる者、ガチガチと体を震わせ身を抱くものなど、俺の威圧に負け、龍弥に回復を放つ者はいなかった。
「クロダくん、なのか?」
恐る恐るといった感じで声を発したのは騎士団長だった。
「久しぶりですね。マルセルさん」
「ああ、クロダくんだ!良かった……良かった……」
震える体で俺の前まで移動したマルセルさんが、両膝をついて俺の腕を掴んで下を向く。
「その節はお世話になりました」
「ああ。お前の恨みは当然だ。俺はいつ死んでも良いように覚悟してきた。君の手で、一思いに殺してくれ。だが、後ろの娘たちだけは助けてやってくれないか?あの子達は命令に従っているだけなんだ」
顔をあげ願い出るマルセルさんの目には涙が浮かんでいた。
「大丈夫ですよ。俺は、この屑だけ殺せれば良いんです。俺の前に立ちふさがらなければですが……そして、マルセルさんにも感謝しているんですよ?あの時、助言してくれなければ、俺は今頃死んでたんですから……」
良い感じで再開を楽しんでる間も、地面に這いつくばりながら必死で何かを叫んでる龍弥に回復を掛ける。傷口が塞がる程度に……
「返せ……元に戻せよ俺の腕ぇ!」
「俺がお前を回復させて、て何の得がある?」
龍弥の髪を掴んで引き上げる。
残った右手で殴りかかってくるのでその腕を掴んで握りつぶす。同時に回復により傷口だけはふさいだ。
ギャーギャーと悲鳴を上げる様を見ながら、手を離すと地面を転がる龍弥。
その両足を踏みつけへし折ってみる。
「じぐしょー!覚えてろ!俺には超回復がある!すぐに回復して……そう言えば、なぜ回復しない?なんでだ……お前か?お前が何かしたのか!」
「今頃気付いたのかよ。俺は最初に腕を切り落とした時から、この、魔封之剣(呪)を使っている」
そう言って手に持つ剣を前に出し説明を始める。
「これで切り付ければ暫くは魔法が使えないという便利な武器だ。たしか40階層ぐらいで出たかな?効果は10分程度だが……重ね掛けもできるぞ?」
「ぐはっ!」
俺はそれを背中に突き刺した。
「セイジ、楽しそう」
ここにきてやっと言葉を発したのはレベッカだった。
「レベッカ・ジュベール様、ですね」
「さすがレベッカ。有名人だな」
「レベッカ様は、王都で常時活動している中では最高ランクの冒険者パーティの一員ですから……」
マルセルさんがレベッカに頭を下げている。
「今はセイジのお嫁さんだけどね」
「お……」
俺が否定しようとすると脇腹をつねられた。痛くはないが……
「それで、これからどうするおつもりで?」
「まずはこいつを殺すよ。できればマルセルさんは魔物にやられたことにして報告してほしい。もちろん無理なら仕方ないが……」
俺の提案に少し考える仕草のマルセルさん。
「お任せを。皆の者も、いいな?」
その言葉に龍弥は泣き叫び、他の者は頷いていた。
最初のコメントを投稿しよう!