ゴミ集めのアネルマ

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 一番最悪なのは、その煙草のゴミを小学校の裏門近くにすぐ捨てること。中には火がついたままのやつもあって、僕はいやいや足で踏み消したことがあるよ。だって、植え込みの木とかに火がついちゃうかもしれないんだよ?火事になったら大変じゃないか。  大人は、ゴミのポイ捨てはいけません、人に迷惑かけちゃいけませんってみんなに言うのに。どうして、子供に言うようなことを自分が守らないんだろう。イジメだってそうさ、子供にイジメをするなって言っておきながら、職員室で先生が先生をイジメてたりする。会社でもイジメやマウント合戦があったりする。ほんと、大人って嘘つきでダイッキライ。僕の母さんだってさ、仕事の人と会うからって嘘ついて、外で知らない男の人とこっそり会ってること知ってるんだから。  でもね、そんな大人の中でも――たった一人だけ。この人だけは信じていいかなって思える人がいたんだ。 「こんにちは」 「あら、こんにちは」  僕の家は学校の裏門から五分の場所にあるから、裏門から登校することが多いんだ。  その門の近くである日、とっても綺麗なお姉さんが作業をしていることに気付いたんだよね。  彼女は大きな皮の袋みたいなのを持っていて、箒とちりとりで何かを一生懸命集めてた。集めたそれを、ばらばらばら、って麻袋にいれるんだ。何を集めてるんだろう、って僕は彼女の手元を覗き込んだんだ。みれば、チリトリの中には煙草のゴミとか、ぐちゃぐちゃのティッシュの残骸とか、とにかくたくさんゴミが集められてるんだよ。 「お姉さん、ゴミ集めしてるの?綺麗にしてくれてるの?」  僕は驚いちゃった。  煙草のゴミって、嫌がる人が多いんだよね。僕もそう。足で踏み消すのも本当は嫌だったくらいさ。  だって火がついてたら熱くて危ないじゃん?そうじゃなくても、吸った人の唾液とかついてたら汚いし、煙草の成分ってすごく有害なんだって聞いたことがあるよ。特に水に溶けると猛毒なんだって聞いた。そんなもの、誰も触りたいわけないだろ?――そんな、少し考えればわかるくらい危ないものを平気でポイ捨てする人の気がしれないけど。  それなのに、とっても綺麗なお姉さんは特に抵抗もない様子でチリトリにゴミを集めてるし、どうしても取りにくい場所は手袋をはめた手でちゃんと拾ってるんだ。僕は感激しちゃった。うちのクラスの先生でさえ、課外活動でゴミ拾いする時は明らかにイヤイヤだし、こっそり自分はゴミに触らないようにってサボってるのが明白なのに。 「ええそうよ。でも、町を綺麗にするためじゃないの」  彼女は僕の呼びかけににっこり笑って答えた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加