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「ゴミが必要なの。ゴミにはたくさん、人の悪意が詰まってるから。それを集めて、とっても大きな大きなお人形を作ろうとしているのよ」
「え、そんなことできるの?」
「できるわ。私、地球人じゃないもの。貴方もそれがわかった上で、私に声をかけてきたのではなくて?」
確かに、彼女はとても変わった見た目をしていた。黒くてつやつやした長い髪に、薄緑色の肌、黄色い目。よく見ると、お腹のあたりにもう一対腕があって、つまり手足が合計で六本もあるんだ。
「え、すごい!お姉さん、宇宙人なの!?」
最初はコスプレかと思っていたけど、違うみたいだ。
だって、周囲を大人達が通り過ぎるのに、だーれもお姉さんに気付いてる様子がないんだもの。
「ええ、そうね。宇宙人になるかしら、貴方たちからすれば」
僕の問いかけに、お姉さんは笑って答えた。
「そして私が見えるということは……貴方は、私が欲するような、ゴミだらけの感情の持ち主ではないということね」
「ゴミだらけの感情?」
「私が集めているのはゴミというより、ゴミに付属したゴミのような人の悪意なの。私の姿が見えるのは心がゴミに染まっていない人間だけ。……子供には、まだそういう綺麗な子がいるのね。素敵なことだわ」
「よくわかんないけど、ありがとう!」
とりあえず、僕のことを褒めてくれているらしいってのはわかる。
そして、町を綺麗にする目的じゃないとは言われたけど、それでもゴミ拾いをしてくれるお姉さんは素敵な人だと思ったんだ。同時に、お手伝いできたらいいな、とも。
煙草のゴミがなくなったら町は綺麗になるし、人のゴミみたいな感情?っていうのもなくなればきっとこの世界はとってもきれいにお掃除されるはずだと思ったんだ。
僕が顔を近づけると、お姉さんがたくさんゴミを捨てた革袋の中から声がした。面白いことに、革袋の中はぐるぐるの薄紫の渦巻きみたいになっていて、そこからたくさん声がするんだ。
『あああああああああああああああうっぜえええええええええ!吸うな吸うなってぎゃーぎゃー喚くんじゃねえよババア!』
『マジで邪魔だわ、なんで生きてるのよアイツ。さっさと死んでくれたら、堂々と再婚できるっていうのに』
『俺ら税金払ってんだからさあ、少しは優遇してくれたっていいじゃん』
『イライラするマジでイライラするああ本当にイライラする!』
『今度はどんな風に遊んでやろうかなー?ナナちゃんと賭けでもしようかしら。あいつがいつ仕事やめて逃げるのかって』
『死ねよゴミ!ゴミゴミゴミゴミ、ゴミがっ!』
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