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PROLOGUE
近代的なガラスばりの高層ビルが続く中にどこか少し廃れた建物。
一方その中の生徒はみんなどことなくオシャレで高貴な印象を受ける。ネクタイこそつけいてるものの、白シャツ長袖を巻き上げただけの俺の容姿はここでは少し浮いていて、さながら『異世界からやってきた』という感じだ。
俊:「あの、すいません……桐葉学園高校から来た王俊って言います。この学校に通ってる相原真央斗さんが倒れたって聞いて、彼の保護者の代わりにきたんですが」
用務員:「ああ、そうなんですね。じゃあちょっと待っててください。念のため生徒手帳見せてもらえますか?」
俊:「あ、はい」
連絡があったのはお昼休みの時間だった。
高校2年生になった俊は桐葉学園の中等部から高等部に進学。引き続きサッカー部に所属しては、ほぼ毎日、朝練、授業が終われば19時過ぎまで部活といういそがしい日々を送っている。将来プロになって活躍したいという夢は変わらず、年齢制限を考え高校卒業までにユースチームへの入団を考えているが、俊の母が強く大学に進学することを希望しており、自身の進路のことに悩み始めていた。
そんなある日のこと、いつものようにほかのサッカー部員と過ごしていた俊のスマホのLINEに母親からメッセージが届いた。内容としては『真央斗くんが学校で倒れたが、あいにくと彼の母親が仕事で行けないので代わりに行ってやることはできないか』というものだった。
真央斗の自殺未遂の話があった後も、むしろそれまで以上に、彼の母親は真央斗の母親と密に連絡を取っていた。ただ単にママ友という関係以上に、俊の母親は中国人で日本の学校や生活で分からないことも多かったため、そういうことに関して真央斗のお母さんに色々教えてもらうことも多く、また人情を大切にするところもあり、今でもよく連絡を取っているようだった。
美愛:「あの…」
俊:「?はい?」
美愛:「真央くんの友達ですか?」
俊:「あ、はい。えっと…」
美愛:「あ、初めまして。私、橋本美愛と言います。真央くんなら保健室で運ばれて、今、横になってます。よかったら、ご案内しましょうか?」
俊:「え?あ、はい。じゃあ……お願いします」
対して俺は、中学生の時に一度再会してから、今まで一度も真央斗には連絡を取っていなかった。俺の高校生活は、正直、かなり多忙でだった。そんな目まぐるしい毎日の中でアイツはもう俺の中では「小学校の時よく一緒にいた子」という記憶の片隅の存在になりつつあった。最後に真央斗に会ってから三年の月日が経過していた。
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