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姫島:「え!その人!?」
美愛:「うん」
姫島:「………そうなんだ。あ、初めまして………橋本さん。ありがとう。じゃまた」
美愛:「うん。またね」
そう言うとその姫島という男子生徒は肩を落としてフラフラと去って行った。何が起こったのか分からず茫然する俊に「驚かせてしまって申し訳ありません」と橋本は言った。
美愛:「『ああいう人』たまにいるんです。迷惑なのでつい初対面の王さんを使ってしまいました」
俊:「あ………そうなんですか。いえ、俺は全然。ただ良いヤツそうでしたけどね。橋本さんはあの人のことあまり好きじゃないんですか?」
美愛:「なんというか………この高校には2種類の考えを持つ方がいまして、『将来をちゃんと考えている人』と『今を楽しみたい人』。その、少し失礼な言い方になってしまうのですが、後者の方はあまり学習意欲が高くないようで………」
俊:「はあ………でも、いいヤツなら試しに付き合ってみればいいのにって思うんですけど」
美愛:「付き合う? そんな時間や余裕、ここの学校の多くの人にはないと思います………あの、失礼ですが、王さん?は本当に真央くんのお友達の方なんですか?」
俊:「はい。もちろん! アイツのことはよく知ってます。小学校んときはもうずっーと一緒にいたんで。きっとさっきの橋本さんと彼のやり取りなんて見たら、今ごろ、走って彼に駆け寄ってなぐさめてると思います。超優しいヤツなんで」
美愛:「………ちょっと信じられないですね」
俊:「?」
美愛:「私の知ってる真央くんはあんまり優しくないです。冷静で、むしろ、言い方が悪くなってもうしわけないんですが、裏で人を蹴落としたり、ハメたりしててもおかしくないのかなって思うこともあるぐらい冷たいですよ。笑ったところ見たことないし、あんまり人とも積極的に話さないし………なんだか別人みたいです」
俊:「ちょっ!なんつーこと言うんですか!?『裏で人を蹴落としたり、ハメたりしててもおかしくない』だなんて………アイツはそんなヤツじゃ」
美愛:「ごめんなさい。でもみんな同じ印象を持っていると思います。よかったら他の人にも聞いてみてください」
俊:「そんな………でも優しくないですか?橋本さんも案外そういうところに惹かれたんじゃ?」
美愛:「惹かれた?………ごめんなさい。分からないですが、私の場合は『逆で』彼が必要なので一緒にいるというだけです。成績も常に上位だし、何より彼は人に干渉しませんから、私みたいに時間を無駄なことにあまりかけたくない、干渉してほしくない人には楽なんだと思います。聞きたいことを教えてもらってそれで終わりなので」
俊:「………」
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