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2-3 三人での女子会
「うわぁー、かわいー!」
「ちっちゃかったよー。あとイルカショーもあって……」
高松家での女子会は、いつも賑やかだ。
NORTH CANALに宿泊客がいない日の夜を選んで、男子禁制にして父親にも外食をしてきてもらうことにしている。今日のメニューは普通の和食で、和歌山土産の南高梅のはちみつ漬け付きだ。
五月中旬、連休も明けて少し落ち着いた頃。
「ということは、晴也君は、別に心配いらんかったん?」
「うん。普通に元気に喋ってたし、次の日も、ずっと笑ってた」
雪乃が彼に会いに行った初日、晴也は車で雪乃をホテルまで送ってくれた。翌日も迎えに来てくれて、一日を一緒に過ごした。動物と触れ合って、イルカショーも見て、一番目当てのパンダとは写真も撮ってもらった。
晴也がどうして一人で小樽に来たのか、どうして元気がなかったのか、全く想像がつかなかった。
「ほんまに、何やったんやろうねぇ」
「うーん……。わからん。とりあえず、元気で良かったわ」
「とりあえずさ、ユキちゃん」
雪乃が撮ってきた写真を見終えてから、翔子は雪乃を見た。
写真の束のいちばん上になっているのは、雪乃と晴也が二人で写った写真だ。
「これ、大輝君が見たら、絶対うるさいよ」
「あいつ……。あれ、私が晴也さんに会いに行ってたこと知ってんの?」
「私は言ってないけど、二日くらいユキちゃんを見てない、って気にしてたよ。で、帰って来たところを見たらしくて、旅行鞄持ってる! って騒いでた」
「大輝君も、相変わらずやねぇ」
嫌われているのではなく好かれているので、悪くはないけれど。
雪乃は本当に大輝と恋愛するつもりはないし、最近はメールはもちろん、LINEを既読無視することも増えた。もっとも、彼には大した用事はなく、変なスタンプを送ってくるだけだ。
「部屋に置いといたら大丈夫かな」
翔子が晴也を連れてきたときのように、大輝もたまに道に迷った宿泊客を連れてきてくれることがある。プライベートで雪乃に会いに突然来ることもある。もちろん、雪乃は仕事があるので、彼の相手はほとんどしていない。
「逆に、大人しくなるんちがう? あんたが晴也君の写真を持ってたら」
「いやぁ……。どうかなぁ。諦めてくれたら良いんやけどなぁ。たぶん……、ならんやろうなぁ」
雪乃はため息をつきながら、買って来た南高梅に箸を入れた。大きい種は取り除いて、ご飯と一緒に口に入れる。
「っぱ、すっぱ……」
普通の梅干しは特に好きではないけれど。
南高梅のはちみつ漬けは、子供の頃から好んで食べていた。酸っぱいけれど、強くはなくて、ご飯がよく進む。
「雪乃ちゃん……否定しないね」
「え? 何を?」
翔子が何を言いたいのか、雪乃はわからなかった。
箸をくわえたまま律子のほうを見ると、嬉しそうな顔をしていた。
「晴也君とどうなったん?」
「え? どうって──何もないから!」
でも、一日一緒にいたんでしょ? と、翔子と律子は口を揃えて笑う。
雪乃はもちろん、晴也も楽しそうに話してくれたけど。
白浜には二人で行ったけれど。
雪乃は誘われたから行っただけで、彼との関係を変えたいとは思っていなかった。
「そもそも、晴也さんがそんなこと思ってないし」
「断言できるの?」
「あの人は……たぶん、婚約してる」
川井家を出る前に、居間に飾ってあった写真が目についた。
庭に咲いた向日葵の前で、晴也が綺麗な女性と嬉しそうに笑っていた。彼が独身なのは泊まりに来た時に聞いていたし、一人っ子なのは、彼の両親から聞いた。
残念ながら雪乃には、恋の相手はまだ現れていない。
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