追憶、或いはノクターン

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 トレーニングを日課にしていた彼の身体は、年齢よりも筋肉質でしっかりとしていた。  今の肉すらも削げ落ちた身体は、むしろ年相応なのかもしれない。  そのなかで彼の肋骨から窪む身体に、やや隆起した性器だけは寸法も肉付きもあまり変わらず存在していた。  ずっしりと肉厚なオオサンショウウオのよう。  穏やかに柔らかく、まるで彼の為人そのものの生殖器。  もう刺激を感じないとはいえ、手足や身体の他の箇所の皮膚より薄く、繊細なそれに爪を立てないよう意識して、あかぎれささくれた自分の指の中でざらついていない指先、腹部分でそっと触れる。  未だ夜を想う。  夜闇はエゴイスティックな私の思いと引き換えにした大きな代償、それにまつわる全てを溶かし和らげてくれる。    錆びついた鳥の鳴き声を聞いた気がした。  外の気配を伺い、遮光カーテンを開ける。  薄明かりがドレスのトレーンのよう、裾広がりに部屋へ差し込む。もう仰向けでしか寝ることのできない、首から下の感覚を失っていたはずの彼を隅々まで照らす。  ふと揺れた光に気づく。  何かを求めるかのように、微かに指先が振れていた。
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