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縫い目が重なる感じで、全ての肉片が凝集すると、カエルは何事もなかったかの様に、茂みへと入っていった。
これが、地中のお化けの、人間が介入した自然界での役割である。
黒い右手は、握り潰した生物をさいの目切りにし、断面を即座に縫う。
この縫い目は、記憶媒体であり、対象の引かれる記憶が刻まれている。
肉片が合体することで、肉体は治り、痛い記憶は全て、地中のお化けに回収される。
その痛い記憶を読み込んだ地中のお化けは、荷台の商品を一つ破壊してしまう。
痛い記憶は、壊された商品に転化され、自分は何事もなかったかの様に、荷台からパトロールをするのだ。
「ご苦労様です。ここまで遠かったでしょう。馬車に損傷がございましたら、部品のストックをお持ちいたしますので、お申し付けください」
依頼主の老人は、どう見ても大金持ちだったが、一商人の私に対しても、腰が低かった(これが成功の秘訣なのかもしれない)。
「いえ、及びません。とても太平な旅路でした。これも天の御使が、加護してくださったおかげです」
私は、深々と頭を下げた。
この旅路の全てに敬意を払わなくては……。
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