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「三間……さん……」
完全に不意打ちだったから、咄嗟に表情を取り繕えなかった。呆気に取られた、随分と間の抜けた顔をしていたと思う。
「ここの会員なのか?」
問われて、そう言えば、今いる場所がトレーニングジムであることを思い出した。
トレーニングマシンに座って顔だけを振り向かせていたから、慌ててマシンから降りて三間と向かい合う。
「いえ。帰り道でちょっと気になって立ち寄ったら、見学を勧められただけなので……。三間さんこそ、どうしてここにいるんですか? 諒真さんと二次会に行くんじゃなかったんですか?」
「それはあいつが勝手に言ってただけだ。俺は元々、帰りにここに寄る予定だったんだ」
それを聞いて、先ほどまで前向きに考えていたここの会員になる可能性について、「ないな」と即決した。例え言葉を交わさないにしても、三間と鉢合わせするかもしれないジムには行きたくない。
目の前の、ただでさえ不愛想な顔が、不快そうに眉を顰める。
「俺がここの会員なら会員になるのやめようって、顔に書いてあんぞ」
図星を指されて、思わず、「ひぇっ?」と変な声が洩れた。
「や、ややややや! そ、そんなことあるわけないじゃないですか!」
「じゃあ、会員になんのか?」
「え? い、いや、それは、その……、今日はただの冷やかしというか、ジムって具体的に何をするのかよくわからなくて、一度中を見てみたかっただけなので……。ここはちょっと家からは遠いし、三間さんのことは関係なく、会員になる可能性は低いかなと思います……」
答えを考えながら喋ったせいで、あからさまにしどろもどろだった。完全に目も泳いでしまっている。
中年の男性が立ち話している僕達を怪訝そうに眺めながら横を通り過ぎ、先ほどまで僕が使っていたマシンに座った。近くで話をするのは迷惑だろうし、いいかげん話を切り上げて早く帰りたい。
それなのに、三間に、「こっちへ来い」とでも言うように、くいっと顎で示され、仕方なく後をついていく。
フロアの壁際に置かれたベンチまで行き、三間は腰を下ろした。三人掛けのベンチで隣は空いている。トレーニングジムで三間と腰を落ち着けて話をする理由のない僕は、二歩分の距離をおき、足を止めた。
いつもとは逆で、座った三間に見上げられる。それはそれで、気分が落ち着かない。
「あの……、もう十分に見学できたので、僕はこれで失礼します。三間さんは……」
どうかごゆっくりトレーニングを続けてください――。言おうとした言葉を皆まで言わせてもらえず、途中で遮られた。
「何食ったらそんなにガリガリになれるんだ?」
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