3 また春から

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3 また春から

桜が咲く、春。 私は無事に大学を卒業し、また半年前働いていた会社の目の前に居た。 社長に買っていただいたスーツに身を通して大きなビルの前、立っていた。 戻ってこれた、またここに。 あの日から社長には会っていないけど、電話は一度した。 『へー、卒業できたんだ。おめでとう。』 「ありがとうございます!また優秀な秘書戻ってきますよ」 『ハハ、おバカさんで手のかかる秘書の間違いでしょ』 なんて悪態を相変わらずつかれたけど。 今日まで秘書を取らず枠をあけていてくれた事を否定しなかったことで物語っていた。 相変わらず素直じゃない。 『4月1日、入学式寝坊したらクビだからね。』 「なっ、子供じゃないんですから」 『似たようなもんだよ、俺からしたら』 30歳なんだから8歳しか変わらないのに子供扱い…。 実際社長は30歳に見えないくらい若いし。 不思議な感覚だ。 そんな会話をしたことを思い出しながらエントランスをくぐった。
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