3 また春から

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なんてことを少しでも考えた私を殴りたいと思った。 私は今全力で頬をつねられている。 この魔王、椎木社長に。 「俺を後回しにするとか、随分良いご身分じゃん?古川さん」 それもとてもいい笑顔で。 「す、すみまへん」 頬がヒリヒリする。 社長室にある私のデスクはあのときのまま形を残していた。 それが少し嬉しくて、頬の痛みが減る。 「ニヤニヤしてないでよね。もう大学生じゃないんだから、優しくなんてしないから」 「優しくされた記憶がないのですが?」 「余計なこと言うおバカさんな口はこのお口かな?」 二度目の頬をつねりを受けてしまった。 何も変わっていなくて安心すらする。 「夏希!翠ちゃん来た!?」 ドアがバンッと音を立てて開くので、肩がビクッと揺れた。 び、びっくりした。 心臓がドクンドクンと音を立てている。
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