3 また春から

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中身を開けると、薄緑色のレター型の名刺入れと、ボールペンが入っていた。 それと薄緑色のカバーが付いた手帳。 どれも控えめに名前が彫られている。 とても可愛らしいけど、どうして私の名前が。 「あの、これは…?」 「卒業祝いと入社祝い。この仕事に必要な3セットだから持ってなね」 とぶっきらぼうにキーボードを叩きながら言ってくる。 何この人。 こんな時までツンデレ臭さが漂うのなんでだろう。 別に君のためじゃないから雰囲気を出してくる感じ。 でも素直に嬉しい。 「ありがとうございます!嬉しいです!社長!」 そう笑顔で伝えると少しだけ優しい表情をしたような気がした。 「さ、早速業務内容また覚えてってもらうから。早く準備して」 そういいながらいつもの社長に戻ってしまう。 自分で気づいているのかな。 時々すごく優しい表情をしていること。 その顔を見られるのは特別感がある気がして、少しドキッとした。
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