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七  先日ココズで食事をともにした時、何度も断ったのだが、結局陽生に奢ってもらってしまった美羽は、今度はお礼にと陽生を食事に誘った。  お勧めの店があると言うと陽生が、 「それなら、是非、美羽さんの手料理をいただけませんか?」  と言うので、莉央も誘い、遊園地に行くことになった。 「え? 莉央も一緒ですか?」  陽生は不服そうだったが、付き合ってもいないのに、二人きりで会うのは憚られたし、また、もし保護者に会ってしまった場合、莉央も一緒ならば、変に仲を疑われずに済むと思ったからだ。    休日になり、陽生の運転する車で神奈川県内の遊園地に赴くと、莉央が真っ先にゲートを出て駆け出して行った。陽生が、 「莉央、転ぶなよ」  と声を掛ける。 「莉央ちゃん、楽しそうで良かった」  美羽が言うと、 「いや、僕は先生と二人きりでも良かったんですけどね」  などと言う。  莉央は途中まで走ると引きかえして来て、 「せんせいも、おじちゃんもはやく、はやく」  と急かした。  メリーゴーランドやコースター観覧車を乗り継ぎ、莉央が十分満足したところで、昼の時刻となった。  園内の丸テーブルを三人で囲み、ピクニックバスケットから手作りのサンドイッチを取り出し、唐揚げや卵焼き、ハンバーグなど、色とりどりのおかずを敷き詰めたタッパーを開けると、莉央と陽生から歓声が上がった。 「たいしたものはないんだけど、どうぞ、召し上がってください」  そう言うと二人は「いただきまーす」と手を伸ばし、口いっぱいに頬張った。  あっという間に完食し、三人のお腹がふくれたところで莉央が、  「おしっこいってくる」  と、すぐ近くにあるトイレへと掛けて行った。  入口が見える場所にあるので、ちゃんと入っていったことを見届けると、陽生が、 「とても美味しかったです。美羽さんは料理がお上手ですね」  腹をさすりながら言った。 「今、母が祖父の実家で暮らしているので、私が料理を作らなくちゃいけなくて、まあ、父も作ってくれるんですけど、でもほとんど毎日のように作ってたら、なんだか料理も楽しいと思えるようになって」 「そうですか。いやあ、美羽さんはいいお嫁さんになれますよ」  そこまで言うと、陽生は美羽の目を見つめ、 「今、お付き合いされてるかたは、いるんですか?」  ときいてきた。 「いえ、いません」  即答すると、 「じゃあ、僕が立候補してもいいでしょうか?」  真顔で言った。 「え?」 「実は、以前から保育園で時折お見掛けしていましたが、ずっと素敵なかただと思っていました。でも、中々声を掛けることも出来なくて、だからこうしてお近づきになれて、本当に良かったと思ってるんです」 「あ……はい」  美羽が言葉を選らんでいると、 「坂上先生、いや美羽さん、僕と付き合ってくれませんか」  単刀直入に告白された。 「あ、あの……」  美羽は迷ったが、陽生という人物に好感を抱いているのは事実だった。 ――この人だったら……。  章吾を忘れさせてくれるかもしれない。美羽は、 「こちらこそ、よろしくお願いします」  と答えた。
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