1人が本棚に入れています
本棚に追加
1
楽しいはずなのに少し苦手なお昼休み。
恋文を詰めた巾着を抱き締める力が強くなる。
出会ったばかりの頃は、「中身をみたい」とせがまれていた。
けれど、今は、誰も気にしていない。多分……。
私は、話すのが苦手だった。私の話はつまらないと何度も言われてきた。
だから、基本は聞き役。
それでも、時々話を振られる。そうなると少し困ってしまう。
「こないだ告白してくれた人とも、付き合わないの」
先週の放課後、教室で告白してくれた人のことを聞かれた。
あの人からの手紙は持ってない。高校に入ってから初めての、手紙のない告白だった。それに彼は、他の人とは少し違うように思えた。
だから、彼のことは、今もはっきりと覚えている。
「私、そういうのまだ分からないから」
私がそう言うと、みんな黙ってしまった。そして、スマホに目を移して何かを入力している。
私は、間違えてしまった。その反応は、不正解だったことを示している。なんて言えば正解だったんだろう。
それが分からないから、この時間が苦手だった。
最初のコメントを投稿しよう!