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投げかけた確信的な問いは、スズリが頷くことでいとも簡単に認められてしまった。しかも悪びれず、笑顔で。
まるで飼い犬が主人に褒めてもらおうとする時のような上機嫌さが気持ち悪い。私は落ちていたスマホをスズリ目掛けて勢いよく投げると、そのまま声を荒げた。
「な、何してんの…!? 早く秦くんを元に戻してよ…っ」
すでに冷えている秦くんの腕をぎゅっと掴み、スズリを睨みつける。するとゴミでも見るみたいな目で嘲笑いながら言うのだ。
「無理だよ、それもう死んでるじゃん」
人の命をなんとも思わない、無関心な台詞。
それより、と私の手を引き、無理に差し出された手の甲に軽いキスを落とすスズリは昔みた御伽話に出てくる王子様の真似事のよう。
「あぁ、これで堂々と言える……カナミ、俺と付き合ってください」
照れくさそうに、まるで受け入れてもらえることが当たり前のような態度で頭を下げる。そんな様子にぞわぞわと鳥肌の止まらない私は慌てて手を引っ込めて叫んだ。
「嫌、触らないで…っ今すぐここから出て行って、スズリなんか嫌い……!」
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