たすけてあげる

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「これがすきなの」 「…へ」 「カナミはこのカタチがすきなの?」  笑顔が眩しい推しのチェキを指差した彼女が聞いた。私が持つグッズの中でも特にお気に入りの1枚だ。  好きかと聞かれ反射的に頷いたあとに、「いや」だとか「うーん…」と付け足してしまったのはこいつがアイドルとして自覚の足りない行いをしたから。  だけどやっぱり愛おしい笑顔を前に「好きではない」とハッキリ言い切れなくて、踏み絵のような罪悪感に苛まれてしまうのはオタクとして仕方のないことだった。 「そう、カナミはこれがすき……」  口の端を微かに上げた彼女は、独り言を呟くとにこり、笑みを浮かべる。まじまじと推しのチェキを眺め、やがてぱっと顔をそらせば私に向き直り言う。 「カナミがすきなカタチになるよ」  そう告げた瞬間、彼女の皮膚がめりめりと剥がれ出す。例えるのなら爬虫類の脱皮に近く、ぼろぼろと落ちた"美少女"の皮の下からは新しい皮膚が顔を出していた。 「な、何…っなんなの…!?」  それは神秘的で、不気味で、どちらの側面も持ち合わせた現象に思わず息を飲む。これまで生きてきた数十年の中で見たこともない光景を目の当たりにした私は"それ"に釘付けだった。  瞬きすらも忘れて食い入るように見つめる私の前から美少女がいなくなったら、次に現れたのは紛れもなく世間を賑わせているあの人物。 「…お…推し、が」  推しが、私の部屋に現れたのだ。
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