だから、ちょうだい

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 振り向けば、ソファーで力なく横たわっているはずの彼がにこにこと見下ろし微笑んでいる。 「……、え? な、に、してるの…」  一度前に顔を向けてもやっぱり秦くんは真っ白い顔で倒れていて、追いつかない頭を抱えた私は自然と瞬きの回数が多くなる。  その一方で秦くんの顔をしたスズリが、清々しいほどの笑顔を見せながら互いの目線を合わせるように屈むと言った。 「みて、"秦くん"になったよ」  上がった口角に下がった目尻。可愛らしい黒目がちな瞳。それは完全に秦くんなのに、滲み出る歪さがどうにも隠しきれていない。  未だ状況についていけていない私を面白がるように軽く笑ってみせたスズリは、何故か誇らしげな顔をして告げる。 「"秦くん"として生きることにしたんだぁ」  薄い上唇を持ち上げ、ぽっかり穴の空いた黒目がこちらを捉えている。それは完全に秦くんの顔をした化け物だった。 「は…秦くんとして生きるって、何…」 「カナミが人間じゃなきゃ好きになれないって言うから、これからはこのカタチのまま人間として暮らすことにする。そうしたら好きになってくれるんだよね?」 「そ、んなの、むりに決まってるでしょ…? まさかスズリ、そのために秦くんを…」
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